帽子かぶって
さて、準備はできた。
あー、やだって思うけどやらないとしょうがない。
初めは楽しいんだけど、だんだん腕も腰も痛くなってやりたくなくなっちゃう。
今だってしんしんと降り続いてる。
嫌になっちゃうな。
愚痴愚痴言ってても振るもんは降るんだし覚悟を決めて、帽子かぶって、いざ!雪かきへ!
うえー、膝まで積もってるじゃん。
やっぱり引き返していい?
ぬくぬくのこたつが私を呼んでるんだけど…
終わらない物語
快晴な空に花びらが舞いあがり、歓声が辺りを包みこんだ
おめでとう、お幸せに、
祝福されながらふたりは一歩一歩と階段を降りていき、寄り添いながら進む
いままではひとりずつの物語を歩んできたけど、これからはふたりの物語を紡いでいく
ゴールじゃなくて、新しいスタートをきろう
終わらない物語のはじまりだ
やさしい嘘
きみはいつだって僕に嘘をつく。
もうそばにいてくれなくていい。泣いてばかりだったあの頃とは違う。知らないだけで私は強くなったから大丈夫。そばにいられるほうが迷惑だ。いつまでも支えている気になってるけど、私はそんな甘ったれじゃないから。感謝はしてるよ。でももういらないや。バイバイ。
そう言って手を振った彼女の背中を見送る。
いつもは背筋をぴんっと伸ばして歩くのに、背中が小さく丸まって、肩は小刻みに揺れている。
僕は知っている。ひとりになったら泣くんだろう。
ごめんなさい、許してって言いながら人知れず泣く姿が目に浮かぶ。
僕を手離すことが僕のためだなんて思って、僕の手を離したきみはなんて馬鹿なんだろう。
やさしい嘘で自分自身を傷つけてボロボロになっていく。
そんなきみがなによりも愛おしい。
ぼくはきみの嘘を受け入れてやるほどお人好しじゃないから。
絶対に離してなんかやらない。
瞳をとじて
瞳をとじてってこのワンフレーズだけで昔流行った映画を思い出す
むしろそれしか出てこないくらい頭に刷り込まれている
瞳をとじて、君を描くよ、まで意識しないでも脳内にメロディーが鳴り響く
これって一種の洗脳なのかな?
ちょっと前にこの映画を久しぶりにみたんだけど、主人公が昔の初恋の人との思い出を巡っていた
そんな内容だったっけと思った
正直、助けてくださいしか覚えてなかった
記憶ってそんなものなんだよね
それなのにこの主題歌はずっと残っている
音楽ってフレーズもメロディーも刷り込んでくるからすごい
いつまでも消えないんだろうな、恐るべし
あなたへの贈り物
贈り物って言えるほどの大それた物じゃないけど、目元をくしゃってさせてはにかんで「ありがとう」って言って受け取ってくれる姿が容易に想像できる。
私があげたしょうもない物ですら大切にしていてくれる彼。
無くさないようにってブリキの缶に入れてるんだって、頬を緩ませながら言った顔が忘れられない。
またくれるのを楽しみにしているよって、子どもみたいに目を輝かせて言うものだからあなたへの贈り物を今日も探している。
海で拾ったシーグラス。森で拾った松ぼっくり。
季節が移り変わるたびにあなたと一緒に見た宝物。
桜の花びら、銀杏や紅葉の落ち葉、向日葵に朝顔、雪の埋もれた南天の実。
ありきたりな物だけど、ふたりの思い出が詰まっている。
これからもあなたに贈っていきたいな。