風邪
幼い頃の記憶。
風邪を引いて学校を休むのにとてつもない背徳感を感じていた。
いまの時間はみんな授業を受けているんだ。そんな中、私はベッドで何もしないで寝ている。
体が動かないし、喉も痛いし、鼻も詰まって呼吸がしにくいのに、私のほうがずるしてるみたいなんて。
ヴェポラップを塗ったハンカチを首元に巻いて、水枕のなんともいえないゴム臭さを鼻が詰まった鼻が臭いを捉えてくる。
喉が渇いたなと水枕の横に置いた微温いポカリで喉を潤す。
大人になって思い出したら何にもよかったことはないけど、これからもずっと色褪せたりしない記憶なんだろうな。
雪を待つ
雪だるまを作って
かまくらも作りたい
それから、特大滑り台!
はやく雪よ来い
大寒波が訪れをいまかいまかと待つ
大きな子どもがテレビの前を陣取って天気予報を毎日欠かさず見てる背中を私がキッチンから呆れながら眺めた
テレビに夢中で窓の外からしんしんと降ってる雪にいつ気づくのだろう
気づいたら嬉しそうに雪だって声が響くのかな
かわいい人だこと
イルミネーション
色とりどりな光の球体が闇夜を照らして輝いている
冬の冷え切った空気に光の粒子が共鳴しているのかな
「綺麗だなあ」って呟きが知らずに漏れて、脚を止めて見入ってしまう
イルミネーションが輝く都会の街から離れて、街灯もない田舎道を寒々と歩く
下を向いていたら鼻水が出てきて慌てて顔を上げたら、闇夜にまた光が輝いていた
オリオン座がすぐに見つけられて、冬の大三角はどれだっけ?
なんて考えてしまった
何気ない冬の楽しみを見つけて、緩んだ頬を手袋の手で押さえて歩きだした
愛を注いで
きみの愛は大きい。
慈悲深く、博愛主義とでも呼べばいいのだろうか。
その中に俺は含まれているとも。
自意識過剰ではなく、それは紛れもない事実なのだから。
でもそれは俺にとっては一番残酷な愛だ。
平等とは心惹かれるもので素晴らしいことこの上ない。
だが、裏を返せば違いもなくただ一定。
そこに特別というものは発生しない。
きみに愛されて幸せだけれども、俺はそれ以上がほしい。
カップの水面張力を決して溢れない愛じゃない。
もっと溢れるほどの愛をカップに注いでほしい。
だって俺はずっと昔から、きみへの愛を注いでるから。
その愛はずっとカップから溢れっぱなしなんだよ。
心と心
目に見えないもので繋がっていたい。
例えるならなんだろう。絆とか?
でも絆って案外脆そうですぐに崩れちゃいそう。
もっと、もっと、体の深いところで繋がろう。
誰の目にも映らないそんなところがいいな。
そこにふたりで辿り着いて。その場所の鍵を交換して。
また巡り逢えたら一緒に開けようね。
私たちだけの秘密の場所を。