おへやぐらし

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2/11/2024, 12:00:08 PM

「この場所で何があったかご存知ですか?」

暗い山道の中、
車を走らせながらタクシーの運転手は聞いた。

「いいえ。何かあったんですか?」

「若い女性が殺されて、この辺りに捨てられたらしいですよ。怖いですね~あなたも美人だからくれぐれも気をつけてください」

そんな話を今しないでよ
不快感と恐怖で身体をこわばらせていると
運転手が途中で車を停めた。

「あの、どうしましたか?」

運転手はゆっくりと後ろを振り返ると
ニタリと笑った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ため息をこぼしながら運転手は
フロントガラスに付いた汚れを掃除していた。
この場所を通る時はいつも以上に汚れる。

大量の手形を拭いていると、
一つだけどうしても取れないものがあった。
それは何度試しても落ちなかった。

お題「この場所で」

2/9/2024, 4:28:24 AM

突然ですが恋人ができました!
笑顔が素敵な美人で優しい女性です。

ある日彼女からこんなお願いをされました。

☺️「私の一族に会ってほしいな」
😧「一族?」

いきなり親戚の方々に紹介されるとは、
とても緊張しています。

彼女の故郷に着くと、
みなさん温かく出迎えてくれました。

- ̗̀ ようこそ ̖́-
( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ )

おめでとう( ͡ ͜ ͡ )
よかったね~( ͡ ͜ ͡ )
宴じゃ( ͡ ͜ ͡ )

☺️「みんなありがとう」

豪華で美味しい食事やお酒まで用意されて、
僕は身も心も酔いしれていました。

さて、そろそろ…( ͡ ͜ ͡ )
頃合いじゃ( ͡ ͜ ͡ )
儀式を始めるかの( ͡ ͜ ͡ )

😧「儀式?」

( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ )
( ͡ ͜ ͡ ) ?!😨🥰 💕︎ ( ͡ ͜ ͡ )
( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ )

いつの間にか一族のみんなに囲まれていました。

仲間が増えるね( ͡ ͜ ͡ )
めでたいね〜( ͡ ͜ ͡ )
宴じゃ( ͡ ͜ ͡ )

彼女にお面を渡されます。
それは笑顔のお面でした。

😨「これって大丈夫な奴だよね?」
🤭「うふふ」

お面を付けると、
僕の顔は( ͡ ͜ ͡ ) になっていました。

お題「スマイル」

2/7/2024, 4:26:40 PM

どこにも書けないこと
それは奴の名前

奴のことを考えてはいけない
強く意識するほど奴の存在感は増す

人が多いところは特に危険だ
人混みの中に奴は紛れている

会話をしていても相手の瞳の中に奴がいるから
他人と目もあわせられない

医者からは一過性のものだと言われてたが
奴が現れてからもう随分と経つ

どこにもいないとあなたは言うけれど
今あなたと話している最中も奴は隣にいる

どこにいても奴は存在する
見えない追跡者からずっと追われ続けているようだ

奴が見えるようになると
普通の生活には戻れなくなる

奴から解放されるためには
永遠の眠りしかないのだろうか

みんなもどうか気をつけてほしい

お題「どこにも書けないこと」

2/5/2024, 2:33:38 PM

物心ついたときから『心のコップ』が見えた。
形も大きさも深さも人によってばらばらだ。

部長のコップを見るとグツグツと
赤い液体が煮えたぎっていた、

部長は機嫌が悪いと、物を投げたり
皆の前で怒鳴りつけたりする。
今日は自分の番だ。

「部長、今朝から機嫌悪いよね」

心配そうに声をかけてきてくれたのはBさん。
いつも周りを気にかけてくれる人だ 。

Bさんのコップを見れば、
ふちすれすれまで液体が溜まっている。
翌日からBさんは職場に来なくなった。

この職場は"いい人"からいなくなる。
残っているのは相当タフな人か変わり者だけ
自分もその変わり者の一人だ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「大丈夫?」

目が覚めると心配そうにこちらを覗くCさんがいた。
ズキズキする頭をおさえながら先程の事を思い出す。

飲み会で部長に一気飲みを強要されて、
酒を煽った自分はそのまま意識を失ったらしい。

介抱してくれたCさんに謝罪とお礼を述べると、
気にした様子もなくニコニコとしていた。

自分はこの人が苦手だ。
わかりやすい部長の方がマシだと思えるくらい。

人懐こくて表情豊かで人気者のCさん。
そのコップの中身はいつも空っぽだ。

赤ん坊に犬や猫、鳥や魚にだって
多少なりとも感情の液体が入ってるのに、
この人の中にはそれがない 。

こちらに伸びてくる手を反射的に振り払ってしまう。
見上げるとCさんは笑っていた。

空っぽだったCさんのコップの底に
液体が溜まり、ついには溢れ出した。

お題「溢れる気持ち」

2/1/2024, 12:15:21 PM

夜の公園で私は一人ブランコを漕いでいた。
錆び付いたブランコがキーキーと音をたてる。

なんでこんな場所にいるんだろう。
あ、思い出した。
友だちにゴロゴロコミックを貸してもらうんだった。
まだかな…ずっと待っている気がする。

ぼーっとしていると、
知らない大人がこちらへ近づいてきた。

その姿にびくっと体がこわばった。
なんでこんなに怯えているんだろう。

その人は私にこう言った。
「もうここにいなくていいんだよ。
あるべきところへおかえり」

…ああ、そうだった。
わたしは大切なことを忘れていた。

それから誰もいない夜の公園で
ブランコがひとりでに動くことはなくなった。

お題「ブランコ」

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