太陽が
エアコン代
支払え
23.『太陽』
23/8/7 ♥200over ありがとうございます
結婚式の鐘ってなんで三回鳴らすか知ってるか?と急に隣の席の男子が聞いてきた。
お前そんなロマンチックだったっけ?授業中、練り消し作りか寝るかの2択しかしないじゃん。
ノートだってテスト前私に頼んで必死に写してるようなやつじゃん。ロマンチックのかけらもなくね?
と思ったけど、私は聞かれたからにはと、知らないと答えておいた。
そうすればお前女なのに結婚式って憧れねぇの?なんて失礼なことを言いやがる。いい度胸だな、外でろよ。
まぁまぁまぁ!といなされて3回鳴らす意味を話しだした。
1回目は自分たちの祝福。
2回目は親への祝福
3回目はゲストへの感謝
当時は興味無くて、ふぅん、なんて聞き流していたけど、その時の話をまたしやがるもんだから思い出したじゃないか。
「聞いておいて損なかったろ??」
と自慢げにタキシードに身を包んでドヤ顔される。ほんと変わらないなと思いながら重いウエディングドレスで体当りしてやるのだ。
今日という日の鐘の音は、あのときの私達にも聞こえてるだろうか。
22.『鐘の音』
君は大きな口を開けてあくびをする。その後決まって目を擦って首を振る。
ご飯を食べるときは、絶対に好きなものは最後に食べるよね。
洗い物をするときは箸から洗ってる。
「見ててもつまんないでしょ」
と、君は肩をすくめて僕を横目に掠めて作業に戻った。
つまらないことでも愛おしいから見続けていられるって言ったら照れて水をかけてきそうだから、とりあえず今はやめておこう。
21.『つまらないことでも』
貴方はとっても身勝手。だって止めても甘いものを求めてどこかへ出かけてしまうのだから。
何度何度止めても、怒っても、わかったわかったといなしながら探し求めに行ってしまう。
私との時間はおままごとなの?
そう、残念ね。じゃあ目が覚めるまで甘いものを貪っていればいいわ。他の女に手を出し続ければいい。
えぇそのままで、もう大丈夫よ。
私がぜんぶ、文字通り"全て"終わらせてあげる。
あいしていたのに、この裏切り者。
20.『目が覚めるまでに』
白いこの部屋に無機質な電子音と呼吸器の音だけが響いている。規則正しい呼吸が、やまない電子音があなたが生きていることを証明していた。
ただそれだけが。
もうどれだけの時間が経ったのだろう。もういつからあなたの声を聞けていないのだろう。
早く起きてほしいと願うばかりで、何も進まない日常に慣れてしまっていたことがとても悲しくて。
夏になったら風鈴を買おうと話していたのが、その何気ない会話自体が、あなたの遺言になるかもしれないなんてそんなこと思いたくもない。それなのに。
手元にあるのは、『尊厳死への同意書』という極楽浄土の蜘蛛すら見捨てた地獄との契約書。
あなたが何をしたというのか。ただ生きていただけのあなたが、困った人に悩むことなく手を差し伸べられていたあなたこそが仏のような人だったじゃないか。
ねぇ起きて。こんな紙書きたくないんだよ。まだまだ行きたい場所だって、話したいことだってある。
風鈴、選んでないよ。青が好きなあなただからきれいな風鈴買いたいって思っていろいろ調べたのにさ。
涙が一つ、あなたの手に落ちた。
その瞬間、あなたに強く手を握られた気がして顔を上げれば。
今更「おはよう」なんて笑いやがって。
19.『病室』