夢を見た。まだ大人になれない年頃の、一番親しかった友人との思い出を。
背伸びをしたかったわけでも、悪びれたかったわけでもないけれど、二人一緒に家を飛び出して夜の街へ出かけた事。
学校では教えてくれない淀みと諦観、燻る煙に乗る悲観。大人になりきれなかった大人たちが、夜の店へと消えていくその背中を見た。
幼かった僕達には、それが大人になるということなんだと輝いて見えた。キラキラした世界だと、その目には映っていた。
あの頃のあこがれは、背が伸び月日を重ねることで忘れつつも叶っていく。
あの頃の僕は、今の僕を見ても同じようなことを思うのだろうか。
蝉にかき消された、あの子の背中と一緒に。
3.『遠い日の記憶』
とても晴れやか、洗濯日和。意気揚々とタオルを干して一仕事終わり。
次は、と他の家事に手をつけようとしたけれど、くぅ、とお腹が鳴り出した。
こんな日はそうめんにしよう。溶けそうなほど暑いから。
青々とした空を眺めつつ、ひんやりとしたそうめんを食べる。
これが夏って感じで、ちょっとエモいんじゃない?なんて思ってしまう、窓際のお昼休み。
2.『空を見上げて思ったこと』
もう終わりにしよう。
それはどちらから言い出したのだろう。不意に漏れ出た言葉は水面に波紋を作るように、静寂に落ちた。
そうだよな、もう終わりにしたいよな。こんな意味のない言い争いは互いを傷つけるだけでしかない。
かたり、椅子の揺れる音がして君は離れていく。行かないでくれ、手を伸ばし止めるほどの余力はもうない。扉が締まり、一人きりになって、やっと自分の投げた言葉の重さに気づく。
もっと優しい言い方はできたんじゃないか。
もっと声色を優しくしたら良かったんじゃないか。
机に頭を伏せて思考を巡らせていると、扉の開く音がした。
音の方向に目をやれば、君はアイスを2つ持って少し申し訳なさげに差し出してくる。
「ごめん。喧嘩はもう終わりにしよう、これで仲直り。溶けちゃう前に食べようよ」
ぐっとアイスを押し付けて向かい合わせに座る。それが君らしくて、救われて。
こっちこそごめん。
そんなふうに言い合えば、2人はまたいつも通り。
1.『終わりにしよう』