宵街

Open App
7/17/2023, 11:02:10 AM

 夢を見た。まだ大人になれない年頃の、一番親しかった友人との思い出を。
 背伸びをしたかったわけでも、悪びれたかったわけでもないけれど、二人一緒に家を飛び出して夜の街へ出かけた事。

 学校では教えてくれない淀みと諦観、燻る煙に乗る悲観。大人になりきれなかった大人たちが、夜の店へと消えていくその背中を見た。

 幼かった僕達には、それが大人になるということなんだと輝いて見えた。キラキラした世界だと、その目には映っていた。

 あの頃のあこがれは、背が伸び月日を重ねることで忘れつつも叶っていく。
 あの頃の僕は、今の僕を見ても同じようなことを思うのだろうか。

 蝉にかき消された、あの子の背中と一緒に。

3.『遠い日の記憶』

7/16/2023, 11:16:44 AM

 とても晴れやか、洗濯日和。意気揚々とタオルを干して一仕事終わり。
 次は、と他の家事に手をつけようとしたけれど、くぅ、とお腹が鳴り出した。

 こんな日はそうめんにしよう。溶けそうなほど暑いから。

 青々とした空を眺めつつ、ひんやりとしたそうめんを食べる。

 これが夏って感じで、ちょっとエモいんじゃない?なんて思ってしまう、窓際のお昼休み。

2.『空を見上げて思ったこと』

7/15/2023, 4:09:35 PM

 もう終わりにしよう。

 それはどちらから言い出したのだろう。不意に漏れ出た言葉は水面に波紋を作るように、静寂に落ちた。
 そうだよな、もう終わりにしたいよな。こんな意味のない言い争いは互いを傷つけるだけでしかない。

 かたり、椅子の揺れる音がして君は離れていく。行かないでくれ、手を伸ばし止めるほどの余力はもうない。扉が締まり、一人きりになって、やっと自分の投げた言葉の重さに気づく。

 もっと優しい言い方はできたんじゃないか。
 もっと声色を優しくしたら良かったんじゃないか。

 机に頭を伏せて思考を巡らせていると、扉の開く音がした。
 音の方向に目をやれば、君はアイスを2つ持って少し申し訳なさげに差し出してくる。

「ごめん。喧嘩はもう終わりにしよう、これで仲直り。溶けちゃう前に食べようよ」

 ぐっとアイスを押し付けて向かい合わせに座る。それが君らしくて、救われて。

こっちこそごめん。

 そんなふうに言い合えば、2人はまたいつも通り。

1.『終わりにしよう』