夢を見た。まだ大人になれない年頃の、一番親しかった友人との思い出を。
背伸びをしたかったわけでも、悪びれたかったわけでもないけれど、二人一緒に家を飛び出して夜の街へ出かけた事。
学校では教えてくれない淀みと諦観、燻る煙に乗る悲観。大人になりきれなかった大人たちが、夜の店へと消えていくその背中を見た。
幼かった僕達には、それが大人になるということなんだと輝いて見えた。キラキラした世界だと、その目には映っていた。
あの頃のあこがれは、背が伸び月日を重ねることで忘れつつも叶っていく。
あの頃の僕は、今の僕を見ても同じようなことを思うのだろうか。
蝉にかき消された、あの子の背中と一緒に。
3.『遠い日の記憶』
7/17/2023, 11:02:10 AM