宵街

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 もう終わりにしよう。

 それはどちらから言い出したのだろう。不意に漏れ出た言葉は水面に波紋を作るように、静寂に落ちた。
 そうだよな、もう終わりにしたいよな。こんな意味のない言い争いは互いを傷つけるだけでしかない。

 かたり、椅子の揺れる音がして君は離れていく。行かないでくれ、手を伸ばし止めるほどの余力はもうない。扉が締まり、一人きりになって、やっと自分の投げた言葉の重さに気づく。

 もっと優しい言い方はできたんじゃないか。
 もっと声色を優しくしたら良かったんじゃないか。

 机に頭を伏せて思考を巡らせていると、扉の開く音がした。
 音の方向に目をやれば、君はアイスを2つ持って少し申し訳なさげに差し出してくる。

「ごめん。喧嘩はもう終わりにしよう、これで仲直り。溶けちゃう前に食べようよ」

 ぐっとアイスを押し付けて向かい合わせに座る。それが君らしくて、救われて。

こっちこそごめん。

 そんなふうに言い合えば、2人はまたいつも通り。

1.『終わりにしよう』

7/15/2023, 4:09:35 PM