ざざなみ

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1/16/2026, 2:06:28 PM

『美しい』

君の瞳はいつ見ても美しかった。
思わず、綺麗...と言葉を零してしまうほどに。
前に一回だけ「君の瞳はなんで、そんなにきれいな琥珀色なの?」と聞いたことがある。
すると、彼は、「僕の先祖が狼に近い存在だったからって家族からは聞いたけど……実際どうなんだろうね?」と言いながら笑っていた。
正直、羨ましいと思った。
なんでも魅了してしまうような綺麗な瞳を持っている君が。
私には人を魅了できるほどのものを何も持っていないのに。
ただただ、毎日を一生懸命に生きて、何もない自分に必死で何かを残そうと、もがいているだけ。
そんなに努力しても私の欲しいものは手に入らないのに、君は先祖という血縁の力で私の欲しいものを奪っていってしまうのだ。
でも、彼の瞳に魅了された私は、そんな事どうだっていいと思えるようになってしまった。
だって、そんなにも彼の瞳は“ 美しい”のだから。
憎めないほどに綺麗なその瞳をずっと見ていたいと思った。

1/13/2026, 1:08:06 PM

『夢を見てたい』

私は生まれつき身体が弱く、幼い頃から入退院を繰り返していた。
そのため、仲のいい友達もいないし、そもそも学校にも通った記憶がほとんどない。
人生の大半をこの病室のベットの上で過ごしている気がする。
そんなせいか、最近は死にたいと思うようになった。
やりたいことも満足にできないし、何より両親に迷惑をかけてしまっている。
私の寿命はもうあまりないと言うのに、毎日お見舞いに来てくれて、元気の無い私を励まそうとしてくれる。
そんな両親が日に日にやつれてきていることを私は知っていた。
原因は多分、定期的にしている私の検査の結果。
私はもうこれ以上誰にも迷惑をかけたくない。
死ぬなら静かに死にたい。
でも、最近は少しいいこともあった。
それは、よく夢を見るようになったこと。
夢の中の私は自由に何処へでも行くことができるし、何より友達もいる。
私にとってこれまでの人生で一番の幸せを感じられるほどの夢だった。
どうせ、もうすぐ死ぬのならこのまま、この幸せな夢を見てたい。

1/12/2026, 12:50:40 PM

『ずっとこのまま』

私には同い歳の幼なじみの男の子がいる。
名前は時雨(しぐれ)。少し珍しい名前だと思う。
生まれた時から一緒で、何処へ行くにも仲が良かったし、家族ぐるみで色んなことをした。
旅行へ行ったり、休みの日にはバーベキューをしたり、夏になると花火をしたり、夏祭りにも行った。
特に喧嘩をする事もなく、ずっと仲良くやっていた。
そんな関係も中学生になると、少しずつ変わり出した。
まぁ、要するに、男女で一緒にいること=恋仲なのかという疑問が生まれるらしい。
別に私はそういう風に思ったことがなく、時雨に聞いても私と同じように「俺も、そういう風に思ったことないな」と苦笑いをしていた。
周りの偏見が過ぎる。どうして思春期頃になると、皆、男女が一緒にいることにそんなに口を出してくるのか。
別に噂したいなら勝手に言ってくれていてもいいけど、言われている側はあまりいい気はしない。
私は今の関係をとても気に入っている。
時雨とのこの距離感がとても心地が良くて好きなのだ。
そのことを時雨に話すと、決まって返ってくる言葉は「俺も今の関係が良いと思ってる、君といると気を遣わなくていいし」だった。
一瞬、本当にそんな事思っているのかなと時雨のことを疑ったけれど、そう言う時雨の表情は驚く程に笑顔だった。
「末永くよろしく」
笑って時雨は最後にそう言ったけど、私は末永くっていつまでなんだろうと思いながらもこの関係をしばらく続けたい気持ちの方が強かったので「こちらこそ」と言っておくことにした。
私達は周りに流されたりなんかしないし、噂を気にして関係を絶つほど性格ができているわけでもない。
しばらくは…いや、ずっとこのまま関係が続けばと願わずにはいられなかった。

8/7/2025, 12:08:13 PM

『心の羅針盤』

私はいつもある物事を決める時に、最初は即決で決めることができるのに、周りの意見を聞いてしまうと簡単に自分の考えを変えてしまい、最終的にどちらがいいのか迷ってしまう、優柔不断な性格だった。
そのせいで、決め事をやる時に友達をイラつかせてしまうのだ。
“ 早く決めてよ”とか“ いつも決めるの遅いよね”とか“ 見てて腹立つ”とか結構クラスメイトから私への悪口がとんでくる。
そのせいで、あまり自分のこの性格が好きになれず、友達もいないと言ったところで。
相談相手がいない私は時折、近所で懇意にしている年上のお兄さんに相談していた。
お兄さんは今まで私が相談したことに一つも否定はせず、どうしたらもっと自分を肯定してあげられるのか、どうしたらもっと生活しやすい環境をつくれるのかを一緒に考えて教えてくれていた。
今日は、最近悩んでいる優柔不断なこの性格について相談していた。
「もう、どうしたらいいのか分からなくてクラスメイトには責められる日々なんです····」
「····そうか、今までよく頑張ったね」
お兄さんは優しく肯定してくれた。
「でも、俺は君の優柔不断な性格好きなんだけどな、クラスの子はその良さを分かっていないんだね」
お兄さんが意味不明なことを言い出した。
普通は面倒くさがられるのに、優柔不断な性格が好きってどういうことなんだろう?
「この性格に良さなんてあるの?皆からは嫌がられてるんだよ?」
「····だってさ、優柔不断ってことは、それだけ、どの物事に対しても真剣に悩んでいるから最終的な選択を決めることができないんだろう?」
「····どの物事に対しても真剣に····」
そんなこと考えたこともなかったのでお兄さんの発想には驚いた。
「だからさ、俺はその性格好きだよ、どの物事に対してもそれだけ悩むことができるなんてそうそうそんな人はいないからね」
「··········っ、ありがとう、今までそんなこと言われなかったから嬉しいです」
泣いている私にお兄さんは優しく頭を撫でてくれた。
「もうそんなに、自分を責めなくてもいいんだよ、なんか話したいことが出来たらいつでもおいで」
その言葉が嬉しくて私は涙を拭った。
「ありがとうございます、おかげで勇気が出ました、今日はとりあえず帰ります」
やらなければいけないことができたから。
「また来てね」
お兄さんは笑顔で手を振りながら、私を見送ってくれた。
私もそれに全力で答えるように笑顔で手を振り返した。
お兄さんは私の心の羅針盤だ。
いつも私を正しい方向へと導いてくれる、そんな優しい羅針盤なのだ。

8/5/2025, 1:58:42 PM

『泡になりたい』

皆、小さい頃に一度は読んだことがあるだろう“ 人魚姫”の話。
最終的に人魚姫は海の泡となって消えてしまうという結末だけど、実はその物語には続きがある。
海の泡となって消えたのではなく、空気の精霊となり、人々に幸運を運ぶ存在になったらしい。
私もいつかそうなりたいと夢見るようになり、もう十年間もこの海に通い続けている。
高校生にもなって、もしかしたら人魚姫が迎えに来てくれるかも、なんて考えていることは変だと思う。
周囲にもよくからかわれるし、そのせいで友達もできない。
どうせ皆から必要とされていないなら、せめて海の泡となってみたい。
本当は精霊になりたいけれど、欲を出しすぎるのも良くない。
この世界がもうどうでもよくなったし、海の一部になりたい。
どのみち、私はもう長くないし。
「誰かこのまま連れて行ってくれないかなぁ」
そう呟いた時、水が跳ねる音がした。
海の方を向くと、女性…ではなく、男性が海に浮かんでいる。
足だと思われる部分は尾ひれになっていて、整った顔立ちをしていた。
「君、どこかに行きたいの?」
いきなり男性が聞いてきた。
私は混乱しながら答える。
「へっ?まぁ…」
あまりに突然で曖昧に答えることしか出来なかった
「へぇ〜、なんで?」
「な、なんでと言われてもこの世界がどうでもよくなったので」
その男性は不思議な顔をした。
「どうして?」
「····私、もうすぐ死ぬんです、寿命がもうほとんど残っていなくて、長くても1ヶ月と言われてしまって、まだかろうじて歩くことは出来るんです」
「ん?ああ、本当だ、あまり寿命がないね」
なんで分かるのか疑問に思ったけれど、あまり気にしないことにした。
「あの、あなた人魚ですよね?」
「うん、そうだよ、男だけどね」
「人魚って楽しいですか?」
私は何を聞いているのだろう。
こんなことを聞いてもどうにもならないのに。
ほんの少しの好奇心だった。
「そうだねぇ、少なくとも人間よりはマシかな」
「そうですか……」
「何?君、人魚に興味あるの?」
「はい……昔からの憧れなんです、生まれ変われるなら人魚になりたいくらい……」
「あはは、なんか面白いねぇ君……ねぇ、この世界にもう未練はないの?」
「そんなのもうとっくに……願うなら、ここじゃないどこかへ行きたいです」
「よし決めた、僕のところへおいでよ」
「えっ?」
「僕についてくるのなら面倒を見てあげる、一生涯でもいいよ」
「····どうしてそこまで」
「んー、君に興味が湧いたからかな?手放すのが惜しいと思って、どうする?ただ、承諾すると君は人魚になること決定だけど?」
何故かこの人についていけば、退屈しない日々を送れそうな気がした。
「お願いしてもいいですか?」
「りょーかい、これからよろしく」
「····末永くお世話になります」
私は彼の手を取った。
その瞬間、意識が遠のきながら水中に引き込まれた感覚がした。

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