『心の羅針盤』
私はいつもある物事を決める時に、最初は即決で決めることができるのに、周りの意見を聞いてしまうと簡単に自分の考えを変えてしまい、最終的にどちらがいいのか迷ってしまう、優柔不断な性格だった。
そのせいで、決め事をやる時に友達をイラつかせてしまうのだ。
“ 早く決めてよ”とか“ いつも決めるの遅いよね”とか“ 見てて腹立つ”とか結構クラスメイトから私への悪口がとんでくる。
そのせいで、あまり自分のこの性格が好きになれず、友達もいないと言ったところで。
相談相手がいない私は時折、近所で懇意にしている年上のお兄さんに相談していた。
お兄さんは今まで私が相談したことに一つも否定はせず、どうしたらもっと自分を肯定してあげられるのか、どうしたらもっと生活しやすい環境をつくれるのかを一緒に考えて教えてくれていた。
今日は、最近悩んでいる優柔不断なこの性格について相談していた。
「もう、どうしたらいいのか分からなくてクラスメイトには責められる日々なんです····」
「····そうか、今までよく頑張ったね」
お兄さんは優しく肯定してくれた。
「でも、俺は君の優柔不断な性格好きなんだけどな、クラスの子はその良さを分かっていないんだね」
お兄さんが意味不明なことを言い出した。
普通は面倒くさがられるのに、優柔不断な性格が好きってどういうことなんだろう?
「この性格に良さなんてあるの?皆からは嫌がられてるんだよ?」
「····だってさ、優柔不断ってことは、それだけ、どの物事に対しても真剣に悩んでいるから最終的な選択を決めることができないんだろう?」
「····どの物事に対しても真剣に····」
そんなこと考えたこともなかったのでお兄さんの発想には驚いた。
「だからさ、俺はその性格好きだよ、どの物事に対してもそれだけ悩むことができるなんてそうそうそんな人はいないからね」
「··········っ、ありがとう、今までそんなこと言われなかったから嬉しいです」
泣いている私にお兄さんは優しく頭を撫でてくれた。
「もうそんなに、自分を責めなくてもいいんだよ、なんか話したいことが出来たらいつでもおいで」
その言葉が嬉しくて私は涙を拭った。
「ありがとうございます、おかげで勇気が出ました、今日はとりあえず帰ります」
やらなければいけないことができたから。
「また来てね」
お兄さんは笑顔で手を振りながら、私を見送ってくれた。
私もそれに全力で答えるように笑顔で手を振り返した。
お兄さんは私の心の羅針盤だ。
いつも私を正しい方向へと導いてくれる、そんな優しい羅針盤なのだ。
8/7/2025, 12:08:13 PM