秘密の箱
秘密の箱といえば宝箱のことなのかなって思う。私ももちろん宝箱というか、宝物ボックスみたいなものを作っていた。アクリルの塊、シーグラス、どこのかよく分からない鍵、お年玉にもらった五百円玉。ちっちゃな私のちっちゃな宝物が、そこにはぎゅうぎゅうに詰まっていた。
友達がくれた折り紙も、妹がくれたビーズも入っていた。そんなことを今更になって思い返す。だって、もう要らないと思っちゃったんだもの。捨てちゃうよね。
今朝、ゴミ捨て場に捨てられていたはずの宝物ボックス、私は秘密の箱と呼んでいたと妹は言った。気になって中を見てみたら、自分があげたビーズが捨てられていたものだから箱を掴んで私のもとに走ってきたらしい。
大泣きする妹に面倒だと思いつつも、妹の頃の年齢の私も、宝物ボックスが捨てられたらこれくらいは泣くだろうなぁとも思っていた。忘れていたのだ。私と妹にはかなりの年の差があって、その頃の私は妹よりずっと泣き虫だったのに。ちっちゃな私の気持ちはとても遠くなってしまった。
ごめんね、これからは大事にするよと言って妹をなだめるうちに、自分がわざわざ五百円玉を抜かずに捨てていることに気づく。本当は、私は、宝物ボックスを捨てたくはなかったのかもしれない。
私の秘密の箱、これからは私と妹の秘密になったけど、もう少しとっておこうかな。ちっちゃな君が、遠くなるまで。
無人島に行くならば
もし無人島に行くならばって、それ、どういう時なのかなっていつも思う。でも、私たちの住んでる町の海から見えるあの島は無人島で、本当に誰も人がいないんだって。ずっと、昔から。
だから、だから君は突然海に行ったの? もう寒い時期なのにおかしいなって思ったんだ。寒いから服の1枚も脱がないで行って、大変だったでしょ?
無人島に行くならば、私のことも連れてってよ。君は、どこに行ったって一人には成れないんだから。
私と一緒がいいでしょう?
秋風
自転車を漕ぎながらツンとくる風に鼻から頭痛が走る。乾燥を感じて急に夏が恋しくなった。最近までは涼しくなったと喜んでいたのに、ここまで来ると寒い。マスクつけようかなと、思って、昔はこんなにマスクって身近じゃなかったのになって少し懐かしくなる。あのパンデミックは終わった。でも、確かに通り過ぎただけなのだと分からされる。
あーにしても冷たい。これ、本当に秋風?
予感
きっとそれは予感なんてものではないのです。
トンボが低く飛んだら雨が降るみたいななんとなくの決まりで、ちゃんと理由があるものだった。
ねぇ、今予感なんて言ったって君は信じないかもしれない。けど、何言ったってそうでしょ? いや、君なら意外と予感って言われたら納得してしまいそうです。心外だなぁ。
とにかく、今、何してるんですか? ねぇ、もう少し待ってくださいよ。今からそっちに行きます。
え? なんで居場所が分かるのか?
やだなぁ、僕は意外と君のことを知っているんですよ?
結局は予感ですけど、たどり着けたら君は……
friends
友だちって言葉は別にいいんだけどフレンドっていうものにあんまりいい思い出はない。あるスマホゲームの話なのだがクラスメイトが突然フレンド申請を送ってきた。話したこともあまりないやつだったから、そわそわとしつつも申請を受け入れた。急にどうしたんだろうと思って後日学校で尋ねてみると、石が欲しくてフレンド申請を送っていたらしい。少しだけがっかりとして、まぁ、あるあるだとは思うんだけど、それ以来フレンドの文字を見るとちょっと気後れしてしまう。
だから面と向かってお前に言われた時にね、少し面白かったんだわ。ごめんな、ちょっと笑いすぎちゃって。