秘密の箱
秘密の箱といえば宝箱のことなのかなって思う。私ももちろん宝箱というか、宝物ボックスみたいなものを作っていた。アクリルの塊、シーグラス、どこのかよく分からない鍵、お年玉にもらった五百円玉。ちっちゃな私のちっちゃな宝物が、そこにはぎゅうぎゅうに詰まっていた。
友達がくれた折り紙も、妹がくれたビーズも入っていた。そんなことを今更になって思い返す。だって、もう要らないと思っちゃったんだもの。捨てちゃうよね。
今朝、ゴミ捨て場に捨てられていたはずの宝物ボックス、私は秘密の箱と呼んでいたと妹は言った。気になって中を見てみたら、自分があげたビーズが捨てられていたものだから箱を掴んで私のもとに走ってきたらしい。
大泣きする妹に面倒だと思いつつも、妹の頃の年齢の私も、宝物ボックスが捨てられたらこれくらいは泣くだろうなぁとも思っていた。忘れていたのだ。私と妹にはかなりの年の差があって、その頃の私は妹よりずっと泣き虫だったのに。ちっちゃな私の気持ちはとても遠くなってしまった。
ごめんね、これからは大事にするよと言って妹をなだめるうちに、自分がわざわざ五百円玉を抜かずに捨てていることに気づく。本当は、私は、宝物ボックスを捨てたくはなかったのかもしれない。
私の秘密の箱、これからは私と妹の秘密になったけど、もう少しとっておこうかな。ちっちゃな君が、遠くなるまで。
10/24/2025, 10:03:35 PM