全員口を縫いなさい。
私が王になった日、そう告げた。言葉とは魔法である。私はそれを独り占めしたかった。そうでなくてはならないと思った。
私の王国では音が溢れるようになった。皆が楽しそうに楽器を演奏した。私は微笑んで民に問いかける。
「良い音だな」
民は答えない。ただ楽器で甲高い音を奏でた。
私は理解した。
この国で、私は最後の人間なのだな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
言葉とは証である。そこに言葉がないのなら、そこに人はいないのだ。
墓で遊ぶのはきっと良くないことなんだろうね。
夢があるんだ。大嫌いなあいつを殺して僕がお墓を作ってあげたいんだ。とても大きなお墓を教会の裏に作って、彼を天国に行けないようにしたい。
夢が叶った。立派なお墓を作ってやった。大きくて苔だらけの汚い岩に、ドブネズミの血をかけた派手で地味な墓。
最後にナイフを刺してやろうと思った。だがナイフは隣の岩に当たってしまった。そこには僕の名前が彫られていた。
僕は添えられた花束を踏み潰した。
笑顔とは光です。笑ってさえいれば神様はきっと貴方を見つけてくれるでしょう。
そう書かれた教会の幕を僕は笑顔で切り裂いた。ステンドガラスも粉々に砕く。とても愉快だ。最高の笑みがこぼれる。
そして白装束の者たちが僕に銃口を向けた。僕の体は踊った。
ああ、神様が見える。
抱えていた孤独や不安が、いつしか僕になっていて。
心を伴って生きていると、僕の中の、何が僕なのかが分からなくなってしまいます。この感情もあの激情も、ただの幻覚のような、とても尊いもののような、醜いもののような気がするんです。
ああ、この脳じゃとても言い表せない。文字という魔法を持ってしても、僕の心をここに生き映すことができない。
こんなに近くにあったのに。
気がつくと、視界には自分の吐瀉物しか映っていなかった。
体の痙攣が止まらない。悲しくないのに溢れる涙は古い蛇口から漏れ出る水のよう。鼻血も出てきた。
あまりの不快感に僕は全てを吐き出した。
辺りには何も無いはずなのに雑音が僕の脳を殴る。聞き取れぬ化け物の叫び声は、いくつも重なってひとつの絶叫になった。
妙に世界が鮮やかに見える。蛍光の空は自分の愚かさを際立てる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちゃんと片付けようね。