NoName

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2/12/2023, 2:21:48 PM

全員口を縫いなさい。

私が王になった日、そう告げた。言葉とは魔法である。私はそれを独り占めしたかった。そうでなくてはならないと思った。

私の王国では音が溢れるようになった。皆が楽しそうに楽器を演奏した。私は微笑んで民に問いかける。

「良い音だな」

民は答えない。ただ楽器で甲高い音を奏でた。
私は理解した。

この国で、私は最後の人間なのだな。

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言葉とは証である。そこに言葉がないのなら、そこに人はいないのだ。

2/11/2023, 11:58:27 AM

墓で遊ぶのはきっと良くないことなんだろうね。

夢があるんだ。大嫌いなあいつを殺して僕がお墓を作ってあげたいんだ。とても大きなお墓を教会の裏に作って、彼を天国に行けないようにしたい。

夢が叶った。立派なお墓を作ってやった。大きくて苔だらけの汚い岩に、ドブネズミの血をかけた派手で地味な墓。

最後にナイフを刺してやろうと思った。だがナイフは隣の岩に当たってしまった。そこには僕の名前が彫られていた。


僕は添えられた花束を踏み潰した。

2/8/2023, 3:09:07 PM

笑顔とは光です。笑ってさえいれば神様はきっと貴方を見つけてくれるでしょう。

そう書かれた教会の幕を僕は笑顔で切り裂いた。ステンドガラスも粉々に砕く。とても愉快だ。最高の笑みがこぼれる。

そして白装束の者たちが僕に銃口を向けた。僕の体は踊った。


ああ、神様が見える。

2/7/2023, 3:30:08 PM

抱えていた孤独や不安が、いつしか僕になっていて。

心を伴って生きていると、僕の中の、何が僕なのかが分からなくなってしまいます。この感情もあの激情も、ただの幻覚のような、とても尊いもののような、醜いもののような気がするんです。

ああ、この脳じゃとても言い表せない。文字という魔法を持ってしても、僕の心をここに生き映すことができない。

こんなに近くにあったのに。

2/5/2023, 4:13:28 PM

気がつくと、視界には自分の吐瀉物しか映っていなかった。

体の痙攣が止まらない。悲しくないのに溢れる涙は古い蛇口から漏れ出る水のよう。鼻血も出てきた。
あまりの不快感に僕は全てを吐き出した。

辺りには何も無いはずなのに雑音が僕の脳を殴る。聞き取れぬ化け物の叫び声は、いくつも重なってひとつの絶叫になった。

妙に世界が鮮やかに見える。蛍光の空は自分の愚かさを際立てる。

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ちゃんと片付けようね。

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