行き先を知らされずにドライブに誘われた。
ドライブデートには華やかなスカートがいいよ、と友人が言うので思い切ってコスモス柄のスカートを新調して着ていった。勇気のいる柄だけれど、紺地に白のコスモスなので、地味な私にも似合っていると思う。
当日迎えに来てくれたあなたは、助手席に座る私のスカートを見て言った。
行き先、変えよ。
変えるも何も、私どこに行くか知らされていないけど。
よく考えたら行き先知らされていないって、いくら私が好きな相手だからって無用心すぎたのかと、今更気がつく。
付き合ってもいないのに、知らない場所へのドライブに一つ返事で行くのはいいイメージではないのかな。
どうしよう、私、とんでもない選択した?
不安だからなのか普段は強いはずの車に酔ってしまい不覚にも私は寝てしまっていた。
隣で彼が、大丈夫?とお水を差し出してくれたり、スピードを落としながら運転してくれたのを感じながら眠りに落ちた。
ついたよ
優しい声で起こされた私の目に入ってきたのは一面のコスモス。
ピンクや薄紫、牡丹色など、鮮やかなコスモス。
わあ、綺麗!
嬉しそうに車のドアを開けて走り出す私の姿を優しい眼差しの彼が眺めていた。
1輪のコスモス
数年前、クリスマス前にフラレた。
秋の間はずっとクリスマスのことだけを考えていたので、文字通り一気に冷え込んだ。
夏から急に冬になってしまった感覚。
このとき以来、クリスマスのことを考えるのは冬に入ってからでもいいことにした。
秋が楽しめないなんて悲しすぎた。
夏の終わりに、
モンブラン食べに行きませんか?
から始まったデートはもう何回目?
コートを羽織る頃にはくっついて歩いても許させる距離になりたいな。
早いかな?
秋恋
親の心子知らずというが、反対の言葉はない。
子の心こそ、親はわからないと思う。
親の私に対する心は愛ではなく執着。
なのに、誰に言ってもわかってもらえない。
もう解放してくれませんか。
あなたが一番心にダメージを追う方法で、終わらせてあげましょうか。
私はホコリを被った大量のアルバムを窓の際に積み上げて、その上に登る。窓を飛び越えれば、解放される!!!
両足で体重を乗せた瞬間に、積み上げたアルバムは崩れた。
私は床に叩きつけられた。
苦しさと全身の痛みで、すぐに顔が上げられない。
やっとの思いで顔を上げ、開いた瞳に飛び込んできたのは、両親に抱かれて幸せそうに笑う、幼き私の写真だった。
愛する、それ故に
静かだ。
憧れの一人暮らし。
夜は早く寝なさいと厳しく躾けられたので、
やりたいことに溢れている。
それなのに、まだテレビもないので、夜にすることがない。
やりたいことは溢れるほどある。
だけど、この生活を維持するには働かないと。
本当なら働く時間も好きなことに使いたい。
だけど、24時間ずーっと好きなことだけしていたら働きたくなったりする?もしかして。
どんなお仕事をしようかな。
ずっと静かな部屋の中心で転がっていると
カタン。自転車のスタンドを外す音。
車が減速して止まる音。
窓を開け締めする音。
夜の澄んだ空気が遠くの音を運んでくる。
こんな時間にも起きている人がいる。
そりゃそうだよね。働いている人だっているんだから。
世間の中心ってどこなんだろう?
ふと考えた。
静寂の中心で
数少ない、人生で良かったと思っていることに新緑の季節に生まれたことがある。
木々の芽吹きとともに歳を重ねることで、人生が活性化する気がする。
今年はどんな歳にしよう?
木漏れ日にあたりながら、考えを巡らせる。
希望に燃える私を、そっと新芽が覆ってくれた。
燃える葉