月をみる時間が増えた。
一人の時間なんてこんな時間にならないと訪れない。
ベランダに出て、ぼーっと月を眺める。
月光浴ってあったっけ?
パワーストーンの浄化に使うって聞いた気がする。
私はパワーストーンではないけれど、なんだか浄化されていくのを感じる。
太陽の光にはすぐダメージ食らう私でも、月には力をもらえる。
夜行性で生きられたら、もっと力が湧いたりするのかな?
moonlight
よくそんなヒールで走れるね。
12センチピンヒールで走る私はよく言われてた。
ネオンの街をひたすらピンヒールで走る。
走る理由は様々だったけど、たいていは終電のため。
見た目の割に超意外と言われるけれど、自分で決めたルールだ。
何があっても絶対に終電で帰る。
まるでヒールがかかとから生えているかのように、足にヒールを吸い付けながら走る私。
ピンヒールで駆け抜けた夜の街には、数え切れないほどの思い出が詰まっている。
笑いすぎて翌日顔の筋肉が引きつる日もあった。
だけどたいていは悲しい苦い思い出。
今宵も心でため息をつきながら、リズミカルなかかとの音を酔った頭に響き渡らせる。
ずっとこんな日々が続くんだと思ってた。
だけど、ある日突然こんな日々に終わりがきた。
おめでとうございます。その靴、しばらくしまっておいたほうがいいよ。お腹の子によくないからね。
あの日から数年。もう頭に響くかかとの音が思い出せない。
「遠い足音」
涼しくなった
八百屋さんの店頭の果物の並びが変わった
街なかでモンブランが目に付くようになった
蝉の声がなくなり、鈴虫の声が聞こえ始めた
秋の訪れを察知するのは簡単で、だけどお洋服のチョイスは難しくて。
ネイルやリップの色ももう少し落ち着けたくなる、私の好きな季節。
この季節特有のワクワクした感じが好きなのはあなたのおかげ。
もう会うことはないけれど。
今どこにいますか?
美味しいりんごでも食べていますか?
アップルパイを焼きながら、今年もあなたを思い浮かべてしまった。
「秋の訪れ」
家の外にでなければ旅ではないと思っていたけれど、それは違うということに気がつけたのはパンデミックから学べた数少ないメリットだと思う。
書物から、映画から、芸術から、家から一歩も出なくても旅はできる。
旅するためには体力も財力も必要だから働いているけれど、一生遊んで暮らせる体力と財力があったなら、私はまず家を解約し、泊まりたいところに泊まり、読みたい本を読み、みたい映画を観て、様々な芸術に触れながら行きていきたい。
だけどそれは夢のまた夢。次の有休計画と、行きたい場所を選びながら、今日も本屋で読みたい本に出会ってしまう。
こうして生きている限り旅は続くのだろうと思う。
「旅は続く」
人生を映画に例えるとしたら私の人生はモノクロ。
他の子はカラーなのに、人生真っ暗な私はモノクロ。
歩いても歩いても光なんてない。
本当に真っ暗な人生。
だけどね、憧れのアーティストが言ってた。
光って、影がないと描けないんです。
だいぶ人より多く影をみている私が描ける光ってなんだろう。
もしかしたら、カラーには出せない味がモノクロにはあるのかも。
辛かった過去は変えられないし、カラーの子のような過去は歩めないけど、モノクロの映画をハッピーエンドにするなら、きっとなれるよね。
「モノクロ」