親の心子知らずというが、反対の言葉はない。
子の心こそ、親はわからないと思う。
親の私に対する心は愛ではなく執着。
なのに、誰に言ってもわかってもらえない。
もう解放してくれませんか。
あなたが一番心にダメージを追う方法で、終わらせてあげましょうか。
私はホコリを被った大量のアルバムを窓の際に積み上げて、その上に登る。窓を飛び越えれば、解放される!!!
両足で体重を乗せた瞬間に、積み上げたアルバムは崩れた。
私は床に叩きつけられた。
苦しさと全身の痛みで、すぐに顔が上げられない。
やっとの思いで顔を上げ、開いた瞳に飛び込んできたのは、両親に抱かれて幸せそうに笑う、幼き私の写真だった。
愛する、それ故に
静かだ。
憧れの一人暮らし。
夜は早く寝なさいと厳しく躾けられたので、
やりたいことに溢れている。
それなのに、まだテレビもないので、夜にすることがない。
やりたいことは溢れるほどある。
だけど、この生活を維持するには働かないと。
本当なら働く時間も好きなことに使いたい。
だけど、24時間ずーっと好きなことだけしていたら働きたくなったりする?もしかして。
どんなお仕事をしようかな。
ずっと静かな部屋の中心で転がっていると
カタン。自転車のスタンドを外す音。
車が減速して止まる音。
窓を開け締めする音。
夜の澄んだ空気が遠くの音を運んでくる。
こんな時間にも起きている人がいる。
そりゃそうだよね。働いている人だっているんだから。
世間の中心ってどこなんだろう?
ふと考えた。
静寂の中心で
数少ない、人生で良かったと思っていることに新緑の季節に生まれたことがある。
木々の芽吹きとともに歳を重ねることで、人生が活性化する気がする。
今年はどんな歳にしよう?
木漏れ日にあたりながら、考えを巡らせる。
希望に燃える私を、そっと新芽が覆ってくれた。
燃える葉
月をみる時間が増えた。
一人の時間なんてこんな時間にならないと訪れない。
ベランダに出て、ぼーっと月を眺める。
月光浴ってあったっけ?
パワーストーンの浄化に使うって聞いた気がする。
私はパワーストーンではないけれど、なんだか浄化されていくのを感じる。
太陽の光にはすぐダメージ食らう私でも、月には力をもらえる。
夜行性で生きられたら、もっと力が湧いたりするのかな?
moonlight
よくそんなヒールで走れるね。
12センチピンヒールで走る私はよく言われてた。
ネオンの街をひたすらピンヒールで走る。
走る理由は様々だったけど、たいていは終電のため。
見た目の割に超意外と言われるけれど、自分で決めたルールだ。
何があっても絶対に終電で帰る。
まるでヒールがかかとから生えているかのように、足にヒールを吸い付けながら走る私。
ピンヒールで駆け抜けた夜の街には、数え切れないほどの思い出が詰まっている。
笑いすぎて翌日顔の筋肉が引きつる日もあった。
だけどたいていは悲しい苦い思い出。
今宵も心でため息をつきながら、リズミカルなかかとの音を酔った頭に響き渡らせる。
ずっとこんな日々が続くんだと思ってた。
だけど、ある日突然こんな日々に終わりがきた。
おめでとうございます。その靴、しばらくしまっておいたほうがいいよ。お腹の子によくないからね。
あの日から数年。もう頭に響くかかとの音が思い出せない。
「遠い足音」