Open App
11/17/2025, 11:15:25 PM

夢だ、と夢で目覚めて思うごとに、きしきし歩いて行くサンダルは湿った砂を踏みながら、暗く期待に満ちた曇りの空の合間を縫ってとつぜん飛び込んできた光芒に、その色とりどりの、ああ、夢だ、と。
『冬へ』

11/13/2025, 3:29:34 PM

豊かな弦楽器のように歌う、目が醒めるように歌うので、そこらの野禽も飛んでいくことのできないほどで、あつくて脆い波のような羽根を生来背負ったまま、唇は紅、白い静かな響きをした弓のようなその体躯の内に、何度火を灯しても消えていく蝋燭を、抱えているのを見る、深い息に振動するその羽毛の中にいながら、そうまでしてそれを、抱えてあなたは
『祈りの果て』

11/10/2025, 11:59:54 PM

青いカレンデュラ、古いみどりの黴まみれの木となめらかな木の器の隙間に横たえて、重さに耐えきれなくなりそうな頭をあなたはときどき静かに振る、眉間にはじっと深く刻まれている皺。
気高い、素晴らしい鉄の薪として、生きてきたのね、でも、ここに帰ってきてくれたのね
『寂しくて』

11/1/2025, 2:37:44 AM

灯した熱の照らす場所だけに身を寄せて、ゆっくりと崩れていく氷の粒の、息づく蒸気をふっとかき分けながら、火を吹く竜の背に乗って、あくびに混じって聞こえる微かな笑い声に、ページをめくる指が鈍く冷えていくのを忘れながら
『光と影』

10/17/2025, 3:41:31 AM

のんどりとした湿っぽい毛むくじゃらの白い大きないぬの、寝返りをうつような、足跡がそこらじゅう駆け回ってつかれたような、螺旋を見て座っているとき、きらきらと波がもうすぐつま先に届く
『消えた星図』

Next