ナツキとフユト【37 目が覚めると】
目が覚めると、ナツキの姿がなかった
コンビニにでも行ったのかと思ったが、布団がきれいにたたまれた部屋からナツキの荷物が消えている
フユトはあわてて飛び起きた
(つづく)
ナツキとフユト【36 私の当たり前】
フユトは両親との縁がうすく、早くから一人暮らしをしていた
最早それが当たり前で、寂しいとも思っていなかった
ところが今、ナツキとインコ、二人と一羽の生活を当たり前に感じている自分がいる
そして、この暮らしがずっと続くのも悪くないと…
(つづく)
ナツキとフユト【35 街の明かり】
ちらほらと街灯が点き始めた街を、ナツキとフユトは並んで歩く
マンションはもうすぐだ
ナツキが楽しそうに言う
「新婚のだんな様を駅まで迎えに行く奥さんの気分を味わっちゃった」
「おい…」
「あれ? 迷惑だった?」
「いや、そんなことは」
ナツキの視線を感じながら、フユトはうつむいて言う
「ええと…うれしかった」
言うなり、顔が熱くなる
(つづく)
ナツキとフユト【34 七夕】
夕方、駅の改札を抜けると、フユトの姿に目を止めたナツキが笑顔で手を振った
フユトは近づきながら尋ねる
「どうしたんだよ」
「フユトを待ってたんだよ」
「なんで?」
「商店街で買い物すると、そこにつける短冊がもらえるんだよ」
駅のコンコースに、大きな七夕の竹飾りが設置されている
「短冊をもらって、願い事を書いて、あそこにつけてもらおうよ」
「いいけど」
答えながら、フユトは考える
あれって子供向けのイベントじゃないのか?
(つづく)
ナツキとフユト【33 友だちの思い出】
ナツキが言った
「マナセちゃんって覚えてる?」
フユトは首をひねる
「いや…」
「山田マナセちゃんだよ、高校の同級生の」
「うーん…ちょっとわからない」
「えーっ、ひどい。彼女、フユトのことが好きだったのに」
「そんなの知らねーよ」
「告白されなかったの?」
「されねーよ」
「やっぱり」
ナツキが意味ありげにうなずく
「なんだよ」
「嘘ついちゃった」
「え?」
「マナセちゃんに、『フユトには好きな人がいるんだよ』って」
「なんでそんなこと…」
(つづく)