ナツキとフユト【7 やりたいこと】
フユトが貸した、パジャマ代わりのTシャツのままのナツキが歓声を上げた
「わー、さすがカフェをやりたいって言うだけあるね」
フユトが手早く作った朝食は、トーストとベーコンエッグとグリーンサラダだ
「別に普通だろ」
「でも、盛りつけ方がきれい」
食べ始めながら、フユトは聞く
「ナツキ、仕事は?」
「実は、今無職で…」
「それで追い出すなんて、お前の恋人もひどいな」
「だよね」
「仕事探さないとな。ナツキのやりたいことは?」
「フユトのカフェを手伝うこと、なんちって」
「おい…」
(つづく)
ナツキとフユト【6 朝日の温もり】
「うわ…!」
フユトが、衝撃に驚いて目覚めると、胸の上にナツキの腕がのっている
結局、断りきれず、行き場がないというナツキを泊めたのだ
予備の布団などないので、一つのベッドで一緒に寝るしかなかった
もちろん、おかしなことは一切していないが
人の気も知らず、ナツキは無邪気な顔で眠りこけている
そっと腕をどかしてから、立って行ってカーテンを開けると、温かな朝日が差し込んできた
(つづく)
ナツキとフユト【5 岐路】
フユトの、その初恋の相手とは誰なのかという質問に答えないまま、ナツキは言った
「そういうわけだから、少しの間、居候させてもらえないかな」
「そういうわけって…」
ナツキは、両手を合わせて言う
「スマホしか持って出られなくて、現金ないし、ほかに頼れる人いなくて」
「でも、見ての通りの狭いワンルームだぜ」
「住むところが決まったら、すぐに出て行くから」
「あてはあるのか?」
「ない」
「おい…」
ナツキが、切なげな顔をして言った
「お願い」
(つづく)
ナツキとフユト【4 世界の終わりに君と】
いくら浮気がバレたとはいえ、着の身着のままで追い出されるとは
フユトはナツキに聞いた
「どういうことなんだ?」
「今日世界が終わるとしたら、誰と一緒にいたいかっていう話になってさ」
「当然、恋人だろ?」
「それが、つい本音を言っちゃって」
「え…」
「初恋の人って言ったら、めっちゃキレられて」
「そりゃそうだろ」
「でも浮気じゃないよ、今でも本気で好きだから」
「それって、俺の知ってる人?」
こくりとうなずくナツキ
(つづく)
ナツキとフユト【3 最悪】
数年ぶりに連絡があって訪ねてきたナツキは、部屋着にサンダルばきだ
フユトが聞く
「何かあったのか?」
「それが、家を追い出されちゃって」
「実家か?」
「いや、恋人と同棲してた」
「理由は?」
「浮気」
「相手が?」
「いや…」
ナツキが、決まり悪そうに自分の顔を指す
「お前、最悪だな」
(つづく)