空が泣くのを堪えているような一日だった。追加の頭痛薬を飲んで、土曜日だというのにさして空いてもいない電車に乗り込む。窓に映る自分の顔はずいぶんな有り様だ。疲れ果てて老け込んだ女に「誰だ」と思う。いや、わたしなんだけどさ。今朝のメイクはうまくいったと思ったのにな。この時間になるとメイクだけではごまかせない。襲いかかる眠気と倦怠感をぐっと堪える。家に帰ったら、ごはんを食べてお風呂に入って、明日の朝までぐっすり眠ろう。泣けない大人なりに、日々をやり過ごす術は知っている。大丈夫だ、空はまた晴れる。
もうずいぶん経つが、あるきっかけから夜に眠れなくなってしまった時期があった。夜は起きて日中は眠る生活。必然、他人との交流は減り、部屋に籠ることが増えた。
当時住んでいたマンションは、窓から鉄道車両基地が見下ろせた。夜通し聞こえる点検の音。扉が開くときのチャイム。レールをゆっくり進む音。ブレーキ。
まだ日も昇りきらないAM4:55、始発電車が走り始める。その音を聴きながら、段々と色を変えていく空を見るのが当時のわたしの日課だった。
暗闇だと思っていた空が次第に群青色に明けてゆき、僅かに星々の輝きを残したまま、仄かに紅く染まる。太陽が登りきってしまえば消えてしまう色に、思わずシャッターを切る。
スマートフォンに群青色と紅色を収めたのを確認して、ようやく眠りにつく。それがわたしの「一日の終わり」の日課だった。
今では夜明けの空を眺める機会はずいぶん減った。夜明け前から徐々に増してゆく生活の気配にまどろみ、朝陽に起こされる。旅先の興奮で珍しく早起きをしたときに、偶然目にするくらいだ。
あの空の色を眺めていた日々は、わたしにとっての夜明け前だったのかもしれない。世間から逃れるように眠りながら、それでもきっと諦めたくなかったのだ。
あの夜明け前からずいぶん経つ。わたしは日の光を浴びて、笑ったり泣いたりしながら日々を生きている。
本気の恋だと毎回思うんだ。だから「もうこんな恋はできない」なんて思っても、きっとまた本気の恋をする。
「カレンダーをめくる」という行為が好きだ。気分一新、「さあがんばるぞ」と思わせてくれる。
毎月デザインが変わるのもいい。ずっと昔に買った「夕方クインテット」のカレンダーの絵柄が好きで、今も部屋に飾っている。
今年はベッドサイドに卓上カレンダーを置いてい
る。四季折々の扮装をしたはにわ柄。かわいい。毎月のささやかな楽しみ。
0655の日めくりアニメも毎日楽しみ。寝坊しちゃって見られない日も多々あるけれど。そういえば今日は月曜日だった!たなくじ見逃した!
世界に一つだけのものなんて無限にある。
無限の中の一つだけだから、特別だ。