明日、世界がなくなったら…
どんなふうになくなるのだろうか。
現在、存在すると言われている物理的な世界、それが消えていくのならば、それに属する全てがなくなる。
いつか処分しないといけない、あれやこれやも。
消し去りたい痕跡、恥、それら全て。
私だけの世界は、私という物質、それの精神世界の中にのみ存在する。
それだけが消えるのならば、今すぐに、あれやこれやを処分しなくてはならない。
だから、それが終わるまで待ってほしい。
世界がなくなったら…。
結局は、どうか、まだなくならないでほしい。
混沌としているようで、とてもシンプルで、世界はとにかく生きている。
本当に存在しているのならば。
君と出逢ってから、私は、虹の端っこを掴んでみたい、と泣くのをやめた。
泣くのを、やめた。
天気が良かったので、小さな小鳥は寝転びたかった。
昨日、たまたま通りかかった木の枝で休んでいた時に、子猿が芝生の上で寝転がっていたのを見つけた。
その子猿は、ゆったりとした横向きになり、自分の体をぎゅっと縮めて守るわけでもなく、静かに横たわっていた。
それがとても羨ましかった。
小鳥は、いつも横にならず眠っているからだ。
横になって眠ることができるだろうか、わからない、けれども、試してみることにした。
時間はかかったが、なんとか横になることができた。
そして、仰向けになってみた。
いささか無理な姿勢だが、なんとか小鳥なりに空を眺めることができた。
左側の羽の方角から、雲が風にのって流れている。
小鳥は、大きく見える空と、そこにある雲を、まるで初めて見るかのように眺めていた。
いくらか時間が経ったとき、小さな子猿が小さな雲に乗って、小鳥の上までやってきた。
子猿は、そうっと手を伸ばした。
「一緒に遊ぼう」
小鳥は、子猿の掌に、そうっと右側の羽をのせて笑った。
「一緒に遊ぼう」
空の上の方で、小さな雲の帰りを待っていた大きな雲が、にこにこと笑いながら言った。
「さあ、おかえりなさい。行きますよ」
「冒険が始まった!」
ありがとう、そのひと言を思うたびに、絶望感に悩まされる。
ありがとう、と感謝で胸いっぱいになりながらも、今の自分を恥じている。
お前は、その善意に背いているのではないか、と。
ささいな努力もせず、ただ惰性で生きるだけの毎日、それで恥ずかしくないのかと。
目を閉じてただ眠る。
厚い厚い地面の内側で太陽を見逃した種のように。
「優しくしないで」
こう言われたら、優しいと思われていると、思ってもいいのでしょうか。
それとも、優しくないと、思われてもいるのでしょうか。
どちらにせよ、こんなふうに言うあなたを、柔らかく包んでさしあげたい。
やって来たばかりの春風のように。