雪月栞

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10/5/2022, 12:57:01 PM

新月の夜

丘の上に立って空を見上げる

沢山の星が、いつもより輝いて見えている

君は私の隣に立って、空の一点を指さした

「あれが射手座だ」

射手座は私の月星座で、彼の師だ

「あぁ、先生だね。……ねぇ、へびつかい座は?」

「へびつかい座は射手座の隣にあるやつだ」

そう言われて隣の方を見る

確かにあった、そこにへびつかい座は並んでいた

「君の星だ」

見つけられたのが嬉しくて、笑いながら彼に言った

彼は鼻で笑ったけれど、耳が赤くなっていた


『星座』

10/4/2022, 1:02:30 PM

月の綺麗な夜

外に出て、ぼーっと月を眺めていたら

後ろから君が歩いてきて、私に声をかけてきた

しばらく他愛ない話をして、笑いあった

ふと、君が私の手を取って跪く

驚く私に君は告げた

「Shall we dance ?」

喜んで、その問いに頷いた


『踊りませんか?』

10/3/2022, 12:34:11 PM

「あの森の奥には行ってはダメよ、魔女がいるの」

ずっとそう言われて育った

でも、道に迷って森の奥に行ってしまった時

出会ったあの子はとても優しくて、心の綺麗な子

私たちはすぐに仲良くなった

こっそり森に遊びに行った

私はあの子が大好きだった


隣町で、病が流行った

見たこともない症状で、たくさんの人が倒れた

隣町に行ってはダメだって決まりができた

でも、どうしても隣町に売ってる髪飾りが欲しくて

私は誰にも告げず、こっそり隣町に出かけた

数日後、町で例の病が流行った

「誰かが隣町に行ったんだ」

「いったい誰がそんな事を」

怖くて、言い出せなかった

「──あの魔女に違いない」

「そうだ、あの忌まわしい魔女の仕業だ」

そんなはずはない、だって行ったのは私なのだ

けれど怖くて、違うと言い出せなくて

あの子は、火刑に処されることになった

待って、待って!違うの!

私のせいだ、私のせいで!

処刑の日、あの子はとても怯えていたけれど

最期、涙を流しながら、とても優しく微笑んだ

あの子はやっぱり魔女なんかじゃなかった

誰よりも優しくて、美しい心を持った

普通の、女の子だった

だから、また会おうね

きっとまた、巡り会えるから

そしたらまた、一緒に遊ぼう


『巡り会えたら』

10/2/2022, 1:08:34 PM

もうだめだと思った

もう終わりだと思った

誰もが終わりを悟り、諦めを顔に浮かべた

けれど、あなたは一人立ち上がった

立ち上がって防ぎきってみせた

決して防げぬ聖罰を防いで、あなたは笑って果てた

今、再び目の前に聖罰が立ち塞がった

でも、今度は決して諦めない

「「 さぁ、奇跡をもう一度起こしてみせよう!」」


『奇跡をもう一度』

10/1/2022, 1:03:44 PM

誰そ彼時とはよく言ったもので

その時間は、人と人ならざる者の区別がつきにくい

遠くから私を呼んでいる君が本当に君なのか

それとも魑魅魍魎の類なのか

夕焼け空は彼の顔に暗い影を落としていて

まるで見分けがつかない

こちらに近付いてきた君が私の手を引いて歩き出す

なんだ、いつも通りだと安心して視線を落とした先

ある筈の君の影はそこには無かった


『たそがれ』

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