ななしのみさき

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3/5/2023, 11:21:30 AM

 たまには、好きって言ってよ。
 その開かない口で、たまにはあなたからキスを迫ってくれてもいいんじゃない?
 いつも私からしたいというのは少し癪だから、たまにはあなたから情熱的に迫ってくれたっていいんじゃないの?




3/4/2023, 7:14:57 PM

【二杭宗宏(にくいたかひろ)×遊佐(ゆさ)あおい】

 朝起きて君が隣で寝ているとき、写真を眺めてはときより悲しそうな顔をする君を見たとき。
 俺が大好きな君には、幸せになって欲しい。そう願わない日はない。

「朝飯食ってく?」
「食べないわけ無いじゃん。お風呂借りるよ」慣れた様に風呂場へと歩いて行った。俺の家に来てまで、朝のルーティーンを行うところに、あおいらしさを感じる。朝に風呂に入るルーティーンも、あおいが泊まるようになってから慣れた。朝食が出ると嬉しそうに笑う顔も、見慣れたものだ。
 慣れた手付きで卵をボールに割り入れる。ボールの中に白だしと水を入れて混ぜ、火にかけて巻く。始めに比べ、綺麗に巻けるようになっただし巻き卵は、今日の弁当に入る。きっとあおいの弁当にも。昨日の夕食の唐揚げも、さっき適当に作った炒め物も、今日の弁当の仲間入りを果たした。

「宗宏。私もお弁当詰めて」昨日も聞いた。いいや。先週からずっと聞いている言葉。
「はいよ」昨日洗った弁当箱に、俺と同じ内容を入れる。あおいの弁当箱は俺よりもかなり小さい。優しい色使いの弁当箱に、特に栄養も何も考えられていないメニューが並んだ。
「何か手伝おうか?」あおいが弁当箱の中を覗いた。
「先に髪乾かせよ。制服濡れるぞ」箸でつまんだだし巻き卵をあおいに食べさせた。
「もう濡れてるよ。」あおいは口を開いて、ほうばった。「今日は出汁か。昨日は甘かったよねー」
「何か不満か?」
「不満なんかないよ。食べさせてもらってる分際で。」
「じゃあ何?」
「昨日の卵焼きさ、似てたんだよね。お母さんが作った卵焼きに。なんか懐かしなって」思わず黙り込む。なんと言葉をかけるべきなのか、たった十六年生きただけの俺には分からなかった。
「何思い出してんだろうね。宗宏の卵焼きなのにね。もうとっくに死んてるのにね。それに、わすれてたはずなのに」悲しそうにあおいが言う。
「明日は、甘いのにするか?」そう聞いたのはあおいのためじゃなくって、俺があおいが悲しそうな顔をするのを見たくなかったからだったり。
「ううん。明日は私が作るよ。金曜日だし。」
「じゃあ明日は、あおいの作る角煮がいい。弁当には肉巻き」
「分かった。じゃあ明後日は宗宏のオムライスかな。……って、いつまでいる気なんだよって思った?」あおいが聞いてくる。申し訳なく思っているのか、目線が明後日の方向を向いている。
「いいよ別に。誰かいるほうがあおいがいいなら。……その前に、早く髪乾かしてこい」俺はあおいの頭に手をぽんと置いた。
「うん。……ありがとう。宗宏」そう言い残して、あおいは洗面台に向かった。心なしか、少し彼女の顔が笑ったように見えた。

 俺が大好きな君に、幸せになってもらえるのなら、俺はなんだってするだろう。君の柔らかな笑顔を見れるのなら、俺はどうなったって別に構わない。そう、本当に心の底から思った。大好きな君の、笑顔が見れるのなら。

2/28/2023, 10:17:55 AM

 逃げてしまおう。この世界から。それがだめなら何処か遠くの街に。

 そう現実から、親から、幼い弟と妹から逃げるように知らないバスに乗った。
 バスの窓から見える知らない風景とバスの揺れが、とても心地よかった。
 明日の学校のことも、今日の夕飯のことも、何も考えずただ、バスに揺られた。

 全く知らない名前と、見たことのない田舎町を見て、ふと我に返った。バス代の230円を払い、知らない町の土に足を乗せた。
「あの。」突然後ろから話しかけられた。ハキハキとした、女性の声だった。
「ここの人ではないですよね。」白を貴重とした清楚という言葉が似合う制服。有名な女子校の制服だった。同い年位だろうか。背は俺のほうが高い。当たり前か。
「寝過ごしちゃって」おちゃらけて言ってみた。笑ってくれることを願って。しかし、彼女は顔をしかめた。
「今のバスが最後ですよ?」一つにまとめた黒髪と白色のスカートが風に吹かれて揺れる。夜空には星が光り輝き、街は月明かりを頼りに進むしかないほど暗い。
「︙嘘でしょ」俺の声は、自分でも掠れていたと思う。

2/28/2023, 9:32:30 AM

現実逃避に食べたあのお菓子の味を、私はもう覚えていない

2/26/2023, 10:51:59 AM

【嬬恋柚輝×東雲捺稀】

 君は今どこにいるのだろうか。
 誰かと幸せになっているのだろうか。
 そう考える夜はいつも眠れず、夜を見送り、光り輝く朝に背を向ける。

 君は今の僕を知っているのだろうか。
 そこそこ有名になって『イケメン俳優』ともてはやされる僕を、かつての僕と分かっているのだろうか。
 覚えていなかったらと考えるたびに、恐怖が背筋をゾワゾワと通る。胸がぐっと苦しくなり、声が出なくなる。こんなの、俳優としては死亡案件だ。

 高校生の時に出会った初恋を引きずって、眠れぬ夜を繰り返して、毎晩恐怖に潰れ、怯える俺は、プロなんて嘘でも言えない。
 アイドル売しているプロのフリをする、弱い弱いただの俳優気取りだ。こんなのが毎日毎日テレビに出ていると考えたら、自分でも気持ちが悪い。


 君は今、何を考えているのだろうか。君の中に、少しでも僕がいればいいのに。そう強く。願わない日はない。

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