①
私の頭は図書館。
沢山の情報が詰まってる。
でもどこを探しても自分のことは書いてないんだ。
昨日の晩御飯はカレーだったとか、
明日のテストはどの教科だとか、
そういうことの、本しかない。
きっと書けないんだ。
自分じゃ自分を。
「どこにも書けないこと」
②
ねえ、ご飯しっかり食べてる?
ちゃんと寝ないと明日仕事行けないよ!
私はあなたに伝えたい。
ごみ捨て行ってくれたの?ありがとう!
ごめん…それ忘れてたわ…ほんとごめん…
私はあなたに伝えたい。
でももうできないんだ。
ごめんね、帰ってこれなくて。
もう、伝えられないんだ。
私は、どこにも、書けないんだ。
「どこにも書けないこと」
①
私の小さな坊やが、時計の針を折りました。
幸いけがはありません。
次に私の興味を引いたのはその理由です。
どうして折ったの、教えてちょうだい。
小さな坊やはもじもじ、動きます。
いったいどうしてしまったの。
遂に口を開きます。
「ママが時計を見たら帰っちゃうから」
私は申し訳ない気持ちになりました。
いつから、私は、
そんなに時間を気にするようになってしまったの。
「今度一緒に新しい時計を買いに行きましょうね」
私は怒りません。
そして、携帯で時間を確認し、私は出かけます。
「時計の針」
②
私は動く。一定で。
誰にそうしろと言われた訳ではない。
私は動く。休みなく。
休みたい時などありはしない。
私は動く。そうすれば、
誰かが喜ぶに違いない。
しかし一体誰のため?
私はどうして動いているのでしょう。
答えのない問は、時間の流れと共に、
音となってこだまする。
それが私の仕事だから。
「時計の針」
①
可視化されているようなそれは、
私の周りを這い、流れた。
昨日からのような気もすれば、
数年前からのような気もする。
私はそれがなにかよくわからないし、
全て知っている。
言葉に出来ないというのは錯覚である。
目も耳も何もかも、騙されている。
私を突き動かすこれは、
私の周りを這い、流れるこれは。
「溢れる気持ち」
②
ここから1歩も動けない。
ひとつも取りこぼしたくはない。
これは全て私のものである。
声に出してはならない。
これは全て私の責任である。
誰にも知られてはならない。
これは全て私の気持ちである。
いかにもな、私の溢れる気持ちである。
「溢れる気持ち」
③
好きだった。
溢れるほど、この気持ちは全て露呈していた。
きっと伝わっていたはずだ。
そこまでに問題はない。
そこからが問題だった。
こぞって皆が私の気持ちを助長した。
表面張力には限界がある。
私の気持ちが溢れるのは時間の問題だった。
元の気持ちは今は雨にでもなっているだろう。
今は、溢れるほどの気持ちは、ない。
「溢れる気持ち」