太田エイ

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3/18/2026, 9:59:37 PM

目の前に椅子がある。

不条理というのは椅子があるのに座れない。座りたいのに座れない。理由は誰も知らない。
シュールリアリズムは椅子が空に浮かんでいるが、当たり前すぎて誰も気に留めない。
ナンセンスは椅子に座ると壊れたり、椅子が座れと追いかけてくる。
この3つの言葉は、それぞれ椅子に向き合っている。

さて。
あなたの目の前に椅子がある。
今のあなたは、もう普通には座れないはずだ。
私が言葉の呪いをかけたのだ。

3/17/2026, 2:58:25 PM

「泣かないよ」、「泣かないよ」と言いつつ涙があふれるような泣き虫で、周りの大人がニコニコしながらからかってくる子供時代だった。そのせいか、泣くことをコントロールできる大人になりました。自然に泣くことは無いのに、「泣かないよ」と唱えるとすぐに泣けてくるのだ。

大人になると付き合いのない方の仏事に出ることも多い。
お通夜お葬式では、故人との関係に合わせて小さく「泣かないよ」から、大きめの「泣かないよ」と唱える。どうも声の大きさで涙の量をコントロールできるようなのだ。まあ、大の大人が大声で泣くのも変だから、小声がいちばん多い。
ところが、この能力を使っていると、この涙が本物か能力かわからなくなってくる。まあ、周りにはわからないので問題はないのだが。

祖母が死んだ。大好きだった。
「相当な高齢で大往生、むしろ祝ってもよいくらいだ」、「ちょっと前まで元気でいらしたのに」、「しばらく会ってなかったなあ」、「子どもの頃優しかったな」‥…。様々な想いが聞こえてくる。
この時ばかりは「泣かないよ」と言う前に涙が出た。でも念のため、小さく「泣かないよ」と言ってみた。
涙がとめどなく溢れてきた。

それ以来「泣かないよ」は効かなくなった。

3/16/2026, 3:44:36 PM

宇宙人はいないことがわかったし、幽霊も存在しない。死は科学的に定義され何の疑問もなくなった。発見されていない生物はいないし、もちろんお化けもいない。もう何も怖くない。暗がりにはあっという間に灯りが点る。そして怖がりはいなくなった。恐怖は笑いに塗りつぶされてしまった……。
だが、人は怖がりたい生き物である。
そのため、人々は怖いものを探し始め、新たな恐怖を作り出そうともがいていた。それさえ滑稽だった。
もちろん恐怖は残っている。皆が知っているが決して口に出さない恐怖を……。
それは人間である。

だから人々は、UFOや幽霊を作り出したのだ。
本当の恐怖から目を逸らすために。

3/15/2026, 12:33:28 PM

こないだの合コンでさ、最初から宇宙ステーション勤務って言ったら急に態度が変わっちゃってね、存在が無くなっちゃいましたよ。一昔前なら宇宙勤務ってだけでモテモテだったらしいけどね。結局地球のお金持ちのために尽くす仕事ってことが知られてね、半年単位で留守になるし、そりゃモテないよね。宇宙勤務あるあるですよ。
でもね、スターダスト社勤務だって言ったらちょっとは興味持ってくれました。まあ、有名で派手な仕事ですからね。そう、宇宙から人工流れ星を撒くんですよ。指定の時間、場所、方向に合わせて、天気も考慮しながら質量を計算して発射する。まあ、計算はAIがやってくれますがね。大概1個か2個、お金持ち相手とはいえ費用はバカになりません。結婚式とかお祝い事ですね。でね、先日、超大金持ちが流星雨を降らせたいってんでもう大量にやりましたよ。全社挙げてステーション5基全部集めて一斉にバーっと。
そんな話をしたら、たまたまそれを見た娘がいてさ、ちょっと仲良くなったんですよ。流れ星お願いできる?っていうから社割で何とかなるかな、結婚式にやろうとなって盛り上がりました。その結婚相手が俺なのか、他の誰かはまだ分からないけど、次のデートの約束できましたよ。ひとつの流れ星でも今の俺には星が溢れて見えます。やったあ!

3/14/2026, 2:04:05 PM

彼女の安らかな瞳を見て、今日の仕事の疲れが全て消えた。その瞳は俺の心を溶かし、安らぎを与えてくれた。
こんなにいい一日の終わり方は久しぶりだ。
そっと手を当てて瞼を閉じる。彼女は恐怖に怯えることなく消えていったのだ。苦しみや痛みを感じず、自分が死ぬことも気づかなかっただろう。完璧だ。
これが殺し屋としての俺の矜持である。

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