【誰にも言えない秘密】
登場人物一覧
速世夏威(はやせかい)、西埜雫翠(にしのなつみ)
囃田賢司(はやしだけんじ)、藍原洸(あいばらひかり)
私こと藍原洸には人に言えない隠し事がある。
仲良くなった子にも言えない大切な秘密。
「この家と掟はバラしてはならない。もしバレたらその時秘密を知った者は大切な人だろうと表社会から消えるかこの世から消えてしまうから。守れるね。洸?」
「はい、勿論です。お父様、お母様。」
毎朝起きて直ぐに両親とこのやり取りをする。
掟を忘れないように、油断しないように。
私の家…藍原家は外の噂では呪いの館と言われている。
人が住んでいる様子は無いのに、悲鳴や鳴き声、稀には怒声や談笑する声まで聞こえてくるらしい。家の人達はもう少し隠そうよ…
「なぁ!今日の放課後、噂の館に行ってみようぜ!」
声高々に告げるのはクラス一番のお調子者の速世くん
「えぇ?夕方は危ないし近付いちゃダメだから辞めよ?」
興味はあるものの、怒られる事だけは避けたい雫翠さん
「夏威はこうなったら止まんねぇしなぁ…雫翠さんにも無理にすすめねぇけど、洸さんはどうする?行く?」
速世くんの幼馴染で、クラスだけではなく私達のまとめ役もしてくれている囃田くんに誘われ
「…私も、気になるし行ってみたいかな…?」と遠慮がちに言えば嬉しそうに「楽しみだなぁ!」なんて笑っている速世くんと、その速世くんに「大好きな洸さん来てくれて良かったな夏威〜」とふざけ合っている二人を見ていると控え目に制服の裾を掴み引っ張る雫翠さんに目を向けて「雫翠さん、どうしたんですか?」と聞けば「洸ちゃんがあの場所に行くなら私も行きます!男二人と洸ちゃんを置いて置けない!」なんて言う雫翠さん。
(近くまでならまだしも、知っている奴が館まで来たら、慈悲も何も無いまま死ぬだけなのにな…私の友人である子供だから、話は聞いてもらえるだろうけど)
何とも言えぬまま家には「友人が遊び半分で行きますので、私が付き添うため、監視を願います。」と連絡を入れた。
___続きはまた後ほど制作致します。
【狭い部屋】
今日も還らぬ貴方を待つ。
掃除を済ませ、買い出しと夕飯の下準備を終え
ポツリ零れるように貴方への思いを呟く。
「────────────────────」
一人寂しい部屋に響く声に目を伏せる。
虚しさを隠すために私は立ち上がり、部屋に向かう。
自室のベットに横になり、天井を見上げる。
ベットの横や机の上には使われる事の無い贈り物。
「おかえり、なんてもう何年も言ってないわね」
二人で映る写真に目を向ければ、幸せに満ちた輝かしい笑顔を浮かべて写る私達。
「こんなに愛していたのに、貴方からはもう伝えられないのね」
苦しい、寂しい…それなのに、貴方の笑顔は愛おしくてずっと忘れられない鎖になっていて。
「私、貴方のくれた幸せにずっと溺れて痛いの」
今日はご飯を食べて、お風呂に入って、寝てしまおう。
明日の朝にはきっとまた笑えるから。
「あんなに狭かったはずの部屋なのに、貴方が逝ってしまってから、私だけになったら広くてとても寂しいの。」
今日もそんな思いを胸に抱いて眠るの。
___私、貴方と過ごす狭い部屋が大好きよ。
【失恋】
忘れられない日だった。好きと言った日。離れないと誓った日。そしてそれを覆された時だった。
「…私のこと、ちゃんと、愛して、くれてたんだよね…?」
不安に押し潰されそうだけど、それでも聞いておきたかった。嘘だと信じたかった。…それで後悔するとしても。
「利用する為だよ。君を使って入り込み、要らなくなれば捨てる。それは、君だって理解してたんだろう?」
ああ、やっぱりそうなんだ。何度も繰り返す出来事、会話。この人も、やっぱり他の奴と変わらないんだ、と
頭が冴えていく。なのに見渡す限り全てが真っ白で辺りを見渡しても変わらず白い空間が続いている。一点を覗いて。声がする。音がする。その近くには物も何も無く、ただ孤独と虚無感に押し潰されそうな【無垢で穢れを知らぬ幼い】自分を、何処か他人事の様に見詰めていた。
「──、─────────。───────────────────。」
はは、ばっかみたい。結局変わらないんだよ人なんて。
「おねえちゃんは、おこえがでないの?」
問い掛ける幼い私に薄ら笑いを浮かべて言葉を返す。
「──。─────────────。──────────────。」
そう。私はお話出来ないの。声を失ってしまったの。
「どうしてなくなっちゃったの?わたしになにかあったの?」
何も無いよ。心配しないで、まだ、眠っていた方がいいよ。ここは明るいけれどまだまだ外は暗いんだ。
「でもおねえちゃんがいるならわたしはほかのところにはかえれないんだよ」
…なんだそれは、知ったことでは無い。帰りなよ。
「やだ!おねえちゃんと、もうはなれないの!ひとりになるの!」
私と、わたしが?離れぬようにひとりに、なるって?バカ言わないで。さっさと戻って生きなさい。
「わたしはもうしんじゃった。まもろうとしてくれてたおねえちゃんのきもちはぜぇんぶきづいてるよ。でもね、こころがね?きずだらけだったの。たえられなかったの」
それで、今の状況が生まれたわけね。そう、そうなのね…ごめんなさいね、私が弱かったわ。もう少し、強くならなきゃね。
「おねえちゃんはもとってもつよいよ。こんなに、くだけちゃうまで、ずうっとがんばったんだもん」
……私、頑張った?ちゃんと、【私】をまもれてた?
「うん、まもれてたよ。お姉ちゃん」
わたしね、もうね…つかれちゃった…休みたいの…
「うん。お姉ちゃんは頑張ったよ。もう、休んでいいんだよ。これからは、私がお姉ちゃんの分まで生きるから」
うん…うん、休む、休んで、また…また笑えるまでは休んで、いつか私は【私】と一緒に居れるようになりたいな。
「えぇ、無理をさせて、ずっと代わりをさせてごめんなさいね。今までずっとありがとう【幼さを隠した私】」
もう、わたしが呼ばれないと、いいなぁ…よぶのは、ずうっとさきにしてね?
「勿論よ。貴女が休めるまで、ずうっとね」
うん、じゃあ、もういくね?
「ありがとう、もう、貴女に頼らないわ。別の形で、きっと会いましょう?」
うん、おねえちゃん。きおつけてね、わたしも、あえるのたのしみにしてるっ
___さようなら、愛しくて可愛らしい偽りの私
「久しぶり。本当の私。」