夢を描け
未来を語れ
自分を見つめろ
将来をイメージしろ
大事かもしれないけど、そういうのなーんも考えずに今を楽しく生きていけたらいいよね
届かない……店とか駅のトイレの荷物かけるフック、たまに届かない……
届かない……ユニクロの棚の上段のハンガー、全然届かない……
届かない……ひょんなことから私のことを支援したいと思った石油王からの五億円が、まだ届かない……
生まれ育った家は林の隣に建っていたので、自分の部屋の東側の窓の外には大きな木々がたっぷりと生い茂っていた。
休みの日の午前中、ベッドに寝転んで窓の方に目をやれば、木漏れ日がキラキラと差し込んで、木々が風に揺れる度に少し緑がかった光が踊っている。
それはいかにも天然のサンキャッチャーのようで、いつまでもいつまでも眺めていることができた。
木漏れ日を浴びながら風に揺れるカーテンをつかまえて遊んでいるうちにいつの間にか二度寝をしたりして、時間が2倍程ゆっくりと流れているようなあの時間を私は確かに愛していた。
とてもとても、愛していた。
音楽に出会った若者は
楽器を覚えて懸命に練習するだろう
いずれ上達して曲を作ることも出来るようになり
ラブソングを作るだろう
そのラブソングは恋人のことを歌詞にしたためて
音源に残したりするのだろう
その音源はいつしか黒歴史になるのだろう
(バンドマンあるある)
その奇妙な手紙を開くと、夜空のような色紙に銀色のインクで文字がびっしりと書かれていた。
日本語でもアルファベットでもないその不思議な文字は、まるで躍っているような形をしていて、ふわふわと浮き上がっているように見える。
いや、実際に浮き上がっている。
どうしたことだ、とあっけにとられているうちに、文字たちはふよふよと私の目の前を移動し、窓の隙間をするりとすり抜けて、夜空に舞い散った。
見上げれば、先程まで見えなかったたくさんの星が、鮮やかに空を彩っていた。
手元には夜空色の何も書かれていない便せんだけが残っている。
明日、銀色のインクを買ってこよう。そして誰かに送ったら、星空をプレゼント出来るのかもしれない。