嗚呼、いい。憂うこともなく僕の誘いを「ええ」と一つ返事で受けてくれる君は大いに僕を満足させてくれる。旨い酒と美女、口も滑らかになるというものだ。
今夜は熱い夜になりそうだ。
嗚呼、いい。憂うこともなく「ええ」の一言、笑み一つで鼻の下を伸ばしてくれる貴方は本当に大馬鹿で御しやすい。
さっきの会話は録音させてもらったから、今夜はこれで帰るわね。
嗚呼、いい。憂うこともなくええ感じの駆け引きを目の前で繰り広げる男女は、多くの場合このあと修羅場を迎えることになる。これぞバーテンダーの醍醐味だ。
今夜も面白いものが見れそうだ。
秘密の場所は
通学路の途中の木苺の木の下
ドロップ型のつるりとした石を
友達と二人でこっそりと埋めた
秘密の場所は
誰もいない朝の音楽室
青白い空気を震わせる楽器の音色を
贅沢にひとりじめした
秘密の場所は
ソファで丸くなる猫の毛並みの上
顔をうずめてもふもふを堪能して
仕事の嫌なこと全部忘れた
秘密の場所は
この手のスマホの中
私の趣味嗜好好きなもの全部詰まった
私だけの最高の空間
春うらら ランドセル背負う 一年生
電柱の影から 見守る母たち
ララランド 思ったより結構 鬱エンド
オープニングと 違いすぎるよ
ドレミの歌 2番のラが雑 ラララララ
も少しどうにかなったんじゃないかい
レレレのレ きっと兄貴は ラララのラ
そして子どもは ロロロのロかしら
風が運ぶもの
テレビのテロップ、SNSにネットニュース。
いつものように電波に乗った沢山の言葉を眺めていると、ふと「風評被害」という単語が目に入った。
風、か。そういえば「風の噂」なんて言葉もあるよなあ。
どうやら言葉はかつて、風が運ぶものだったらしい。
瞬時に世界中へと届く電波と違って、風の運ぶ言葉はどんなだっただろう?
きっと運ばれる間に細切れになって、風の音にところどころが掻き消されて、原型を留めないままに思いも寄らない場所へたどり着いたりしたんじゃないだろうか。
そして、風が去ると共に立ち消えて行ったのだろう。
一瞬で吹き抜けていく幻のような言葉の紡ぐ物語は、嘘か本当か確かめるすべもない。
あらゆる言葉が記録として、証拠として残されてゆく現代とは真逆の性質を持っていたのだな。と不思議に思う。
私の言葉も、たまには風に乗せてどこかへ運んで貰おうか。
question
2013
どうして私はクラスに馴染めないのかな。
何故みんなとうまく話せないのかな。
今日グループで話してた時、私の受け答え変じゃなかったかな。
なんで私はあの子みたいに可愛くないのかな。
2023
どうしてお父さんは死んじゃったのかな。
なんでよりによって流行りの感染症だったのかな。
最後の時は手を取るのもゴム手袋ごしで、お父さん嫌じゃなかったかな。
今、寂しくないかな。
誰に向かって聞くでもない、嘆きのような、独り言のような沢山のquestionは、私の頭の中に産まれては答えも得られないまま、いつでもふわふわと漂い続けている。
20年も経つとその内容も大分変わったなと思う。
今に比べれば若き日の疑問を取るに足らないことと思う人もいるかもしれないけれど、昔も今も、同じくらい真剣で必死に問いかけているんだよ。