風が運ぶもの
テレビのテロップ、SNSにネットニュース。
いつものように電波に乗った沢山の言葉を眺めていると、ふと「風評被害」という単語が目に入った。
風、か。そういえば「風の噂」なんて言葉もあるよなあ。
どうやら言葉はかつて、風が運ぶものだったらしい。
瞬時に世界中へと届く電波と違って、風の運ぶ言葉はどんなだっただろう?
きっと運ばれる間に細切れになって、風の音にところどころが掻き消されて、原型を留めないままに思いも寄らない場所へたどり着いたりしたんじゃないだろうか。
そして、風が去ると共に立ち消えて行ったのだろう。
一瞬で吹き抜けていく幻のような言葉の紡ぐ物語は、嘘か本当か確かめるすべもない。
あらゆる言葉が記録として、証拠として残されてゆく現代とは真逆の性質を持っていたのだな。と不思議に思う。
私の言葉も、たまには風に乗せてどこかへ運んで貰おうか。
3/6/2025, 12:20:55 PM