やりたいことリスト
絵の練習。
本を読んで語彙力を上げる。
書きかけの小説(嗤)を完成させる。
TRPGを勉強して、シナリオを作る。
そうだ。
何かを作って、誰かの記憶に残りたいんだ。
それ以外にも、やりたいことはたくさんある。
時間が足りないなぁ。
「月に願いって、元ネタは何?」
遊びに来た友達は雑誌から目を離さずに、声だけをこちらに飛ばした。
「知らん。歌かなにかじゃないの?」
マニキュアを塗りながら答えると、それが彼女の気に入るものではなかったようで、「つまんないの」という声とともに読んでいた雑誌が飛んできた。
「願うと、どうなるの?」
「知らないけど、落ち着くんじゃないの?」
片手分が終わった私は雑誌を投げ返す。
ストレス発散の方法に、声を出したり言葉にして吐き出すといったものがあったと思う。
声に出すことで目標をはっきりさせるとか、諦めるとか、何かしらの納得でもするんじゃない? そう答えると、彼女は「そういう考え方ね…なるほど」と雑誌をしまう。
「私も、今度月に願ってみるわ。
好きな人との両想い」
がんばれ〜と応援すると、彼女は窓からまだ明るい空を見上げた。
次の日から、彼女はこれまで以上に一緒にいることが多くなったけど、何を願ったの。
真夜中。
主に深夜を指す言葉だが、私は感覚で別の捉え方をする。
それは、真っ暗の中。
月も星もなく、ただただ暗い空間が私にとっての真夜中だ。
そこは本当に独りだけの場所で、当然話しかける人も、同じ場所にいるだけの人もいない。
誰にも会わず、誰のことも考えなくていい。
それが私にとっての真夜中。
私だけが漂っていればいい場所。
「好きです!」
強い風が吹く屋上で、タカノリは目の前のクラスメイトに声を張り上げた。
ユキナは風に声をさらわれまいと大声を出すクラスメイトに向かって、ふわりと微笑んだ。
小学生の頃から、よく同じクラスになったものだ。
何度同じクラスになっても、特に仲良くした覚えはない。
一体いつ、そう思われるようになったというのか。
ユキナはタカノリの耳元で囁いた。
「愛があれば、何でもできると思う?」
タカノリは筋少した面持ちで、一度だけ強く頷いた。
ユキナはそれを見て、屋上の柵を指した。
「飛び降りて」
信じられないという目に映るユキナの笑顔は、今まで見たどの顔よりも……冷たかった。
「あんた、私の給食のミカンを盗んだよね?
体育の授業で、足を引っ掛けて転ばせたよね?
私を階段から突き落としたこともあったよね?
調理実習で使う割烹着を、男子トイレに投げ込んだよね?
それで、あんたの口先だけの愛とやらが、私を癒やしてくれるの?」
飛び降りたところで、私にはなんにもならないんだけど。
ユキナの冷たい瞳は、青ざめるタカノリを見据えるばかりだった。
後悔はしている
なぜ安全を最優先にしなかったのか
早く起きられたからといって、手の込んだ物を作らなければよかった
食べるところをよく見ていればよかった
それでも全体の三分の一程度ではあったが、もう疲れたと思っている部分もあった
心全てで後悔しているといえば、私は否定する
悔いていないといえばそれは嘘だ
せめて本人から幸せだった。ありがとうの言葉があれば、この気持ちは治まるだろうか。