Yugi

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「好きです!」

強い風が吹く屋上で、タカノリは目の前のクラスメイトに声を張り上げた。
ユキナは風に声をさらわれまいと大声を出すクラスメイトに向かって、ふわりと微笑んだ。

小学生の頃から、よく同じクラスになったものだ。
何度同じクラスになっても、特に仲良くした覚えはない。
一体いつ、そう思われるようになったというのか。

ユキナはタカノリの耳元で囁いた。

「愛があれば、何でもできると思う?」

タカノリは筋少した面持ちで、一度だけ強く頷いた。
ユキナはそれを見て、屋上の柵を指した。


「飛び降りて」


信じられないという目に映るユキナの笑顔は、今まで見たどの顔よりも……冷たかった。

「あんた、私の給食のミカンを盗んだよね?
体育の授業で、足を引っ掛けて転ばせたよね?
私を階段から突き落としたこともあったよね?
調理実習で使う割烹着を、男子トイレに投げ込んだよね?

それで、あんたの口先だけの愛とやらが、私を癒やしてくれるの?」

飛び降りたところで、私にはなんにもならないんだけど。

ユキナの冷たい瞳は、青ざめるタカノリを見据えるばかりだった。

5/16/2024, 11:00:19 AM