失われた時間
それはとある人の未来。
未来と言っても、70代の人のものだ。
まだ外を歩きたかったろう。
まだ見たいものがあったろう。
まだ遊びたかったろう。
娘のキヨミだって、まだ一緒にいたかった。
一緒に遊びに行き、同じものを見、写真を撮って、こんな事があったね、楽しかったねと笑い合いたかった。
それでも、人の命はあっけなく終わる。
ふたりのこれからの時間は、もう訪れることはない。
一年後、私はどうなっているだろうか。
ガチな話、自分の創作世界になにか進展があればいいな。
どうせ独りになって終わる人生、やりたいことだけで頭を満たしていたいよほんと。
マコトの初恋は、いつの頃だったろうか。
昔から現実にいる異性に恋心を抱いたことはなく、すべてがテレビの向こう、動く絵であった。
実ることのないはずの赤い実が弾けてしまったことはマコトにとって悲しむことでも悔しがることでもなく、自然なことだ。
今日もマコトは誰に迷惑をかけるでもなく、秘めた想いを胸に生きていく。
惨めになるから優しくするな。
悔しくなるから優しくするな。
頼むよ。いつも通りでいてほしいんだ。
やらかしたことを自分で考えて、答えを出したいから、優しさは邪魔なんだ。
優しさはいらないんだ……今は。
とある作家が、作品の中で楽園を見た男の話を書いていた。
その男の見た楽園は、確かに楽園と銘打つに相応しいもの。おそらく、世界の大多数が願っている環境だった。
しかし、「幸せ」「好み」「楽園」…自分に良い気持ちをもたらすもの、「不幸せ」「嫌い」「地獄」…自分を嫌な気持ちにさせるものはその人によって違う。
私にとっての楽園はなんだろう。
現実ではない環境がそれに当たるかもしれない。
家族仲が良かったあの頃?
子どもでいられたあの頃?
魅力的だが、それは引きこもっていたい時代だから楽園ではない。今となっては憧れる過去である。
好きなときに好きなものが側にあって、食べたいときに食べられるような…。
碌でもないな。今のナシ。