さぁ冒険だ
推し活とはすなわち冒険だ!
推しに会うために、新しい服を買ってみる。
もちろんいつもの何十倍も洒落たワンピース。
「推し色・概念」を取り入れたものを選ぶという譲れないこだわり!
普段着ることなんて無いからこそ、買うのにはそこそこの勇気がいる。
メイクもヘアアレンジも、動画を見ていつものナチュラルメイクからは程遠い「かわいい」に全振りしたものにチャレンジ!
推しの素晴らしさを布教するために、音ハメ動画なんか作ってみる。
初めて動画編集なんてするから、分からないことだらけ。
推し布教でSNSにアップするために写真の技術も上げたい。
自分の住む街の一画に、映えスポットになりそうな所を発見して密かに喜ぶ。
と同時に、地元の魅力を再発見する。
尽きることのない向上心。
深まっていく推しへの想い。
推し活と称して色んなものを見て触れて、感覚が研ぎ澄まされていく。
ああ、こんなにも私の人生面白いんだ!!
さぁ、冒険だ!!
次はどんな推しの概念を見つけられるだろう。
次はどんなワクワクが待っているだろう。
私の冒険の舵を切ってくれるのは、いつだって大好きな推しなんだ!!
一輪の花
君との記念日のために一輪の花を買った。
ピンクの薔薇だ。可憐に咲き誇るその花は、贈る相手に感謝の意を示すのだとか。
その日は花言葉というものを、人生で初めて活用した。
生花屋さんで花を選んでいる私の目には、この一輪の薔薇が幾重にも成長し、私と彼を囲う立派な薔薇園ができるほど長い時間を共にするビジョンが見えていた。
そんな私の想像は易々と枯れ果てた。
別れは急に来る。とはよく言ったものだ。
スマホに鳴り響く緊急事態を告げる電話。
動転しつつ話を聞くと、彼が事故にあったと言う。
嫌な予感がし、居ても立っても居られず、さっき買ったばかりの一輪の薔薇を握りしめて走る。
到着した時には、なにもかも
終わっていた
棘のついたその花は、
手向けの花になってしまった。
私はその花をギッと握った。
私の流した涙は、どちらの痛みからだっただろうか。
今でもあの痛みを鮮明に覚えている。
魔法
幼少期から魔法使いに憧れていた。
プ◯キュアとか、ハ◯ー・ポッターとか、児童書に出てくるマジカル系少女とか…。
未だにこの手から魔法が放たれる光景を想像してしまう。厨二病にも程があるだろう。
そう、自分でも思う。
大人になった今、私は魔法なんて使えなかった。
でも私は出会ったんだ、魔法使いたちに。
歌という魔法で世界中を虜にする彼らに。
その歌声で、そのファンサで、その笑顔で、そのダンスで、世界がトキメク。
ライト煌めく幸せな空間を易々と作り上げてしまう彼ら。
舞台上を舞う彼らと目が合った瞬間、時間停止魔法をかけられたかの様にピタリと呼吸が止まる。心臓が痛いほど高鳴る。
さながら心を奪う魅惑の魔法使いだよ。
私はペンラを全力で振りながら、ああ、魔法使いって本当にいたんだと呟いた。
君と見た虹
あの時の私は、あなたのことが好きだからこそ不安でいっぱいだった。
どんどん減っていくメッセージとデートの回数。
付き合ってまだ全然経ってないのに、もう冷められたのかなって不安だった。
だからあなたを呼び出したの。
私の思いを伝えるために。
あなたの大好きなコーヒーを口実に、あのカフェに。
窓から見える雨空は、私が作ったものだった。
長時間の話し合いの末カフェから出ると、空にはほんのり輝く虹。
ああ、雨、止んだんだ、よかった。
隣で虹を見るあなたの目も優しく輝いていた。
あなたは私の話をじっくり聞いてくれた。
私の不安を分かった上で慰めてくれた。
私の心にも温かい虹がかかった。
しかし、もう二度とあなたと虹を見ることは出来なかった。
わたしがあなたに見た虹は、ひと時の幻想に過ぎなかった。
【色とりどり】
推し活をしてると時々病む。
Instagram、TikTok、X…
推しに対しての愛情はグッズの量だと言わんばかりの投稿…
色とりどりの写真・イラストが宝石みたいで、見てると純粋に綺麗とか可愛いとかすごいとか思う。
だけどどうしてもその後に心がモヤモヤする。
まだ学生の私には財力なんてものはない。
グッズなんてそんな何個も何個も買えるわけない。
ああ、早く大人になりたいな。自分で稼いで好きなだけ買える、そんな大人に。
でも学生の今、これだけは天に誓って言えるんだ。
私はあなたが大好きだと。私と出会ってくれてありがとうと。ずっとあなたを応援していくね。