いつもの紅茶

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一輪の花


君との記念日のために一輪の花を買った。
ピンクの薔薇だ。可憐に咲き誇るその花は、贈る相手に感謝の意を示すのだとか。
その日は花言葉というものを、人生で初めて活用した。

生花屋さんで花を選んでいる私の目には、この一輪の薔薇が幾重にも成長し、私と彼を囲う立派な薔薇園ができるほど長い時間を共にするビジョンが見えていた。



そんな私の想像は易々と枯れ果てた。

別れは急に来る。とはよく言ったものだ。

スマホに鳴り響く緊急事態を告げる電話。

動転しつつ話を聞くと、彼が事故にあったと言う。

嫌な予感がし、居ても立っても居られず、さっき買ったばかりの一輪の薔薇を握りしめて走る。





到着した時には、なにもかも
終わっていた



棘のついたその花は、
手向けの花になってしまった。


私はその花をギッと握った。


私の流した涙は、どちらの痛みからだっただろうか。


今でもあの痛みを鮮明に覚えている。

2/24/2025, 3:02:26 PM