お気に入り
「偶には他の食べようとかならないの?」
「え?こんなに美味しいのに?」
何時もの様にお気に入りのお店でお気に入りの物を頼んだ。すると隣に座る彼女が不満そうだったので聞いてみるとこう言われた。何故なんだ。
「だってさ?飽きちゃうかも知れないじゃん、もったいないよ。」
「飽きたりしないよ。って言うか莉乃だって好きなの頼んでるだろ。」
「私はゆー君より色んな物頼んでるしいーの!」
彼女は膨れて言った後、それにね、と諭すかの様に優しく話し出した。
「時にはチャレンジだって必要だよ?人生と一緒。好きな物だった〜ってなるかも知れないし嫌いかも〜ってなるかもだけどそれも良い思い出でしょ?ねっ!私とお気に入りを探そうよ。」
俺はチャレンジが苦手だ。なんで態々わからない物を食べるのか。意味が分からなかった。
今なら分かる気がする。確かにな。莉乃の言う通りだった。もうお前はいない。けど莉乃の言った事を全部やってみようって思えたんだ。遅過ぎるけど。お前の見た事、考えた事を試したいと思ったから。お前は空から見守ってくれてるのかな。
誰よりも
今年もこの時期が来た。私はこの時期が余り好きではない。何故なら田舎のおばあちゃん家に三日程泊まるからだ。アニメで見るような田舎なのに面白い事なんか何もない。今回もきっと変わらない。
次の日〜
朝早くに目覚めてしまった。家も暇だしとりあえず散歩でもしてみよう。アニメで見る様な田舎なんだし絵描く時の参考にでもしてみようかな。歩くのは疲れるけど運動不足だったしね。
何となくだけど川の方に来た。近くには森があるけど入らなければ良いでしょ。
「あーこれでも無い!丁度良い所無いかなあ。」
「、、、どうしたの?」
川の方を見ると男の子がいた。見るからに怪しいけど気になってつい声を掛けてしまった。
「今ね、風景を描きたくって丁度良い所探してんの!」
話を聞くと同じく絵を描くのが好きで、好きなアニメや小説の傾向も似ていた。そんな彼、颯太君は病気で余り外に出られないお母さんの為に綺麗な風景を探しているらしい。
「あっ」
「どうしたの?」
「ごめん!もうすぐ朝ごはんかも!」
「そっか。ならさ、その後も時間あれば一緒にここに来て話そ。」
「良いよ!どうせならスマホで連絡先交換しよ。スマホ今持ってる?」
「持ってるよ!ほら。」
話をするのが楽しくて時間はあっという間だった。このまま別れるのが何だか惜しくて交換先を交換してから別れた。食事中も気が気じゃなかった。
2日後〜
後もうすぐでこの生活は終わる。今までが嘘の様に名残惜しい。颯太と最も一緒に絵を描きたかった。一緒に笑ったり価値を共有したかった。こんなに別れって辛い物だったんだね。
きっと貴方は私の中で誰よりも大切な人です。どうせ伝わら無くともせめて伝えたくって
「明日は晴れますか?
「どうしたの?急に敬語なんてさ。でも、そうだね。明日は間違いなく晴れでしょうね。」
その言葉に驚いていたのに更に驚く事が待っていた。
「君の為に絵を描いてきたんだ。ハナミズキっていう花でね。」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「今日の月も綺麗ですよ。これからよろしくね!」
今、きっと私は誰よりも幸せです!!
『私事ですみません!ナヅナです!ちょっとこのお題好きすぎて何回か書くかもしれません!以上です。何時も長いのに最後まで見てくださる皆様、ハートをくれる皆様、お気に入りに登録してくださっている皆様、本当にありがとうございます!今度こそ以上です!それでは!!』
10年後の私から届いた手紙
何時も通りの毎日が変わったきっかけは一通の手紙でした。手紙には主に後悔の手紙が綴られていた。今ある悩みについてこうすれば良かったとか。最初は冗談半分で読んでいたのに目が釘付けになって話せなかった。誰にも言っていない事も書いてあった。
それからはその未来を変える為に努力をした。けれども努力して悩みが消えた時、私に出てきたのは更なる悩み。2回に分けて送られてきた手紙には10年後の私からの解決策はもう無い。不安だった。何をすれば良いのか分からなくなった。
しばらくしてから10年前の私に手紙を書こうと思った。何かが変わるとは思えなかったがそれでも書きたいと思ってしまった。思えばあの手紙は変わっていた。一回目の手紙でも書いてあった事が二回目でも書いてあった。そんな手紙でも縋りたくなってしまうのは私の弱さだろう。
書き終わった時に残ったのは虚しさだった。私の人生何だったんだろうって何だか悲しくて一時の感情で死のうと思った。
もうすぐ私は死ぬけれど、もしあの手紙が届いたのなら良いな。
「あれ?こんな手紙何てあったけ?えーっと、10年前の私へ?悪戯かな、まぁとりあえず読んで見よっと。丁度退屈してたんだよね!」
伝えたい
あと少しで冬から春になってまた一年が始まりそうな今。私は病気で入院していた。私の病気は悪化していくばかりで春を迎えれるかも怪しい。確かなのはそろそろ死ぬという事だけ。春は出会いと別れの季節とは言うが、それなら私の春はみんなより早くに来るのだろう。みんなとの別れと死後の何かとの出会い。そもそも死後とは何なのだろう。地獄や天国があるのか、転生するのか、それとも現世でみんなに気付かれず彷徨う事しか出来ないのだろうか。
「ん?どうしたんだよ。そんな顔すんなって。幸せが逃げていくぞ。」
「そんな顔してた?」
「してた。人生考えてばっかじゃ辛いだろ?」
考え事をしていたら壮真に話しかけられてた。けらけら笑いっているこいつはつい最近知り合った。壮真だって生きれる可能性はもう殆どない筈なのにどうしてこんなに明るく入れるのか甚だ疑問だ。と言うか壮真は常にこんなんだし人生考えてばっかじゃ辛いなんていう程考えているとは思えない。最早呆れてを通り過ぎて凄いと思う。
「あっ。その顔は呆れてを通り過ぎて凄いと思うって顔だな?」
ニヤリと笑って言ってきた。当たってるのが腹立つ。
「そんな苛々すんなって。お前は昔から顔に出やすいんだよなぁ」
昔って程じゃないし、ほんの一か月で何を言っているんだ。それにしても私はそんなに顔に出やすいのかな。何か嫌だ。
「まぁそんな気にすんなよ。」
またけらけら笑いながら私を弄ってくる。これも何時もの事だ。私が考えていると邪魔ばかり。今日も何時も通りの一日が始まった。
三週間後
今日は私の手術がある日だ。此処で良くなら無かったら確実に死ぬ。何時も弄ってくる壮真も最近は弄ってこなくなった。こうも静かだとつまらない。考え過ぎて嫌な事しか頭に思い浮かばない私が嫌だ。壮真が話しかけて来ないのに苛立つ。話しかけられて苛立っていたのに、邪魔しないで欲しいと思ってたのに今ではこんなに話しかけて欲しいなんて。かと言って私から話しかけるのは癪だ。一体どうしたって言うの?何時も元気で毎日弄ってきてたじゃん。
八時間後
手術は無事成功した。これからは良くなって行くだろうと。私はどうやらまだ生きられるらしい。
「手術、どうだったよ」
久しぶりに声を聞いた気がする。その声は記憶より弱々しかった。
「成功したって」
「そうか。良かったな。」
「うん、、」
「、、、、、、、、」
「、、、」
沈黙が続く。何時もウザい位元気だったじゃん。何か喋ってよ。
「なぁ、一つ最後に聞いてくれないか?」
最後?最後って何?そんな事言わないでよ。私だって良くなったんだから壮真なら楽勝でしょ?ねぇ。
「何?」
言いたい事は沢山あったけど何とかその言葉を捻り出せた。
「俺、お前の事好きだったんだよ。」
「なっ何を言っ」
顔から火が出そうな位赤くなったのも束の間。口に人差し指を置かれて黙らさせらせた。その次の言葉は信じられない物だった。
「お前は生きられそうで良かったよ。本当に。俺はもう駄目みたいだ。」
どうしようも無いと言ったふうに笑って話す壮真。こんな姿は一度も見た事がなかった。
「医者と親の話、聞いちまったんだよ。もう無理だって、」
「本当はさ。もう俺も分かってたんだよ目の前が暗いし寒いし身体が上手く動かせねぇ。」
そんな事一度だって言わなかったじゃん。
「死ぬのが怖くないかと聞かれたら嘘になるが。最後に紬に好きだって言えたしもう悔いはないからな!」
何よ、それ。ふざけないでよ。一人で勝手に伝えて。
「紬はちゃんと生きてくれよ。」
感情を整理している間に聞こえたこの言葉が最後に聞いた壮真の声だった。
次の朝
起きると壮真はもう既に死んでいた。その時漸く気づいた。気づいて、しまった。私も壮真の事が好きだったんだ。あの時の違和感の理由も壮真が話しかけて来れなくて苛立った理由も気づいてしまった。私まだ壮真の告白に答えてない。生きてくれだなんて。壮真が居ないこの世界で。ねぇもし私の言葉が聞こえてるんなら伝えたい言葉があるの。
ー私も貴方の事が好きでした。どうか私と付き合ってくれませんか?ー
聞こえてなくても。来世ではきっと貴方と結ばれる様に。それまで忘れないよ。貴方との思い出と共に生きてみせるから。
この場所で
何もかもが久しぶりで懐かしかった。電車に乗って、そこから1日に2回しか来ないバスに乗って帰省した。半ば絶縁するかの様にこの場所から都会に出て数年。朧げだったのに辺りを見る度に思い出が浮かび上がって来る。あんなに遠くに見えた大人たちのその光景は当たり前にしか思えなくて、当時好きだった公園の遊具はもう撤去されていて。この場所は懐かしいとは思うもののあの頃とは随分と変わっていた。
都会に出てブラック企業に入って精神を病み暫くしてから父が亡くなったのだと母が泣いて電話してきた。嫌いだろうけど最後くらい顔を出しに来てって。精神を病んでから何もやる気が起きなかったけどこれだけは行かねばならないと思った。
実家に着くと母が出迎えてくれた。母は最後会ったとりより痩せ細っていたし大きかった家は小さく見えたし父は穏やかに眠っていて別人の様だった。父はこんな風だっただろうか、母はこんな表情でこんな姿だっただろうか。きっと昔から私は私の事しかずっと考えてなくて居なかった。この時初めて本当に私は自分以外の誰かの事を心配して、考えていた。
葬儀が終わって帰ろうとした時、親戚の叔父さんに呼び止められた。母が軽度の認知症だ、と。今はまだ私の事を覚えているがいつか近い未来忘れるだろうことも。最後くらい親孝行を少しでもしたくて介護をする事を伝えた。
お母さん、今までごめんなさい。これからもこの場所で私が出来る限り居るから。だから、、目を開けてよ、。お母さんもこんな気持ちだったの?ねぇ、私どうしたらいい?ねぇお母さん?私を一人にしないで