絆
春の芽吹く今の時期
花粉もあるけれど
ほんのりとした暖かさが好き
春は出逢いと別れの季節
先輩と離れ離れになるのが悲しくて
卒業について考えていると少し涙が出てくる
優しいふんわりとした笑顔や
みんなをまとめ上げる姿、
勉強やサーブを教えてくれた事に
憧れだった
私もこうなりたい
こう思って貰える様な先輩になってみたい
って心の底から思えた
引退した時に
「これからも頑張ってね!応援してるから!」
何て笑顔で先輩達は言った
全員が同じ言葉ではなかったけど
その全てに私達を応援してくれていると分かった
「私達の絆は永遠だから!」
って言って貰ったミサンガ
辛い事はあってもお陰で乗り越えられたんです
今も昔もずっと宝物です
「私も先輩達みたいになる為に努力します。」
貰ったミサンガを撫でながら誰に話す訳でもないが
自然と口から漏れた言葉に
改めて決意する
やっぱりこの時期が好きだ
暖かさが歓迎してくれている様で
怖くても踏み出せる勇気を貰えるから
今までは無理だと決めつけていたけど
今なら何故かいける気がするの
遠くの街へ
毎年の様に来る手紙。お元気ですか?とか当たり障りのない文しか書かれていない此処までならなんともないが差し出し人の名前は見覚えのない名前で地域も知らない地域だった。不気味でもありどきどきやワクワクもあったその手紙を書いた人の正体を知りたくてたまにその場所に行って探している。今は好奇心で埋め尽くされたその手紙を見ながら電車に乗っている。次第にこの遠い街でも知り合いが出来たり好きな店が出来た。今日も何時もの様に目的地に着いたらその人の正体を知る為軽い足取りで慣れた様に遠くの街へ歩き出す。
現実逃避
皆んなと遊ぶ、話す、こんな事をしたって辛く長い人生の暇つぶし、ほんの少しの現実逃避にしかならないのに。
それでも手を伸ばしている私がいる。
助けてなんて言えないけどそれでも現実逃避で安心出来るから。
心が壊れてしまわぬ様に必死になって現実逃避をする。
例え数十年後でもはたまた数日後でも私が救われるその時まで。
死ぬ時が初めから知れたなら良かったのに。
ゴールが見えないのはとても怖い。
でも見えていたとしてそれが数十年後なら私はきっと耐えらなかっただろう。
なら見えない方がきっと良かった。
いや、こんな事考えたってしょうがないか。
辛い事は見たくも考えたくもない。
私はこうしてまた現実逃避をしていくのだろう。
この先も永遠に。
君は今
君が居なくなってからもう随分時が経ったんだよ。
あの日何も言わずに何処かに消えた君。
元気にしてる?
君は危なっかしい所があるから不安だな。
でも君の事だから案外元気にやっているのかもね。
何時も笑顔で皆んなのムードメーカーだった君。
意外と努力家な君。
よく恋愛小説を読んでいた君。
君は今何をしてる?
あれから僕は色んな事があったよ。
苦手で何が良いのか分からなかった恋愛小説を読んで見たり、嫌いだった炭酸も飲めるようになったり、人付き合いが苦手で君以外話す人も居なかったけど最近少しだけ話せる様になったんだ。
君に話したい事も、聞きたい事も沢山あるんだ。
今日は君の誕生日だったよね。
誕生日おめでとう。
時計を見るともう直ぐ最終下校の時間になりそうだった。ノートと教科を閉まって帰る。
君が居なくなってから何処か心に穴が空いた様な気がするんだ。
炭酸の抜けたサイダーみたいに物足りない。
また会えるその時はまたよろしくね。
物憂げな空
空を見る。木の葉の隙間から見える空には太陽は見えず雲ばかりが覗く。太陽を見たのが何十年も前に思う。何時も通りの薄暗い霧があるこの森の奥には誰も立ち寄らない。動物達なら見かけたが人なんて私以外には滅多に見かけない。ここから少し歩いた所にある小さな小屋が私の住処。毎日決められたルーティンから逸れる事は無いのだろう。
空を見る。今日も空は雲に覆われている。湖から帰る帰り道で何時も通り空を見ていた。少しの間空を見上げていたが飽きてしまって正面を見ると少年がいた。何やら不思議そうな顔で此方を見る。
「何?」
「えっ?嗚呼!ごめんね、こんな奥に人がいる事に驚いて。」
「ふーん。まあ此処から離れた方がいいよ。暗くなると更に霧が出て帰れなくなるから。」
ほら行った行ったと手で追い払う。私でも夜に出歩くと危険なのだからあんな子が出歩ける訳がない。少年は直ぐに見えなくなった。それにしても変わった子だった。そもそも此処には、それもこんな奥まで入るなとは言われ無かったのだろうか。少し先程の事を考えながらドアを開けた。
空を見る。今日も何時も通りだ。来た。遠くから走る音が聞こえる。あれから毎日あの少年はくるのだ。
「君はこの森について詳しいね。」
この前小屋に向かって歩く道中、そんな事を言われた。当たり前だろう。ずっと昔からここにいるのだから。生命の神秘も木々や湖の美しき事も、森の儚さもここの事なら何でも分かる。
空を見る。隣には少年から青年となったあの子がいた。何やらずっとこちらを見てくる。
「何か付いてる?」
「いや?ただ君はずっと変わらないなと思って。」
怖くないのだろうか。声には愉悦の色が付いていた。呆れの表情を全面に出しながらそちらを見る。彼は未だに笑っていた。
空を見る。何時もと変わらない。少年は死にここには私一人になった。なにか変わった訳では無い。むしろ最近が可笑しかったのだ。誰に言う訳でもないが言い訳をした。帰り道とはこんなにも長かっただろうか。すぐになれるだろうが落ち着かない。私は一人ドアを開けた。
空を見る。今日も雲に覆われている。また正面を向くとあの時の様に少女が此方を見ていた。不思議そうな顔で此方を見ている。
「何?」
また新たな物語が始まる。物憂げな空も何時も通りで幾千の時が経とうが変わらずあった。御伽話の様なそれは御伽話にしては少しビターな味がした。