ナヅナ

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         伝えたい
あと少しで冬から春になってまた一年が始まりそうな今。私は病気で入院していた。私の病気は悪化していくばかりで春を迎えれるかも怪しい。確かなのはそろそろ死ぬという事だけ。春は出会いと別れの季節とは言うが、それなら私の春はみんなより早くに来るのだろう。みんなとの別れと死後の何かとの出会い。そもそも死後とは何なのだろう。地獄や天国があるのか、転生するのか、それとも現世でみんなに気付かれず彷徨う事しか出来ないのだろうか。
「ん?どうしたんだよ。そんな顔すんなって。幸せが逃げていくぞ。」
「そんな顔してた?」
「してた。人生考えてばっかじゃ辛いだろ?」
考え事をしていたら壮真に話しかけられてた。けらけら笑いっているこいつはつい最近知り合った。壮真だって生きれる可能性はもう殆どない筈なのにどうしてこんなに明るく入れるのか甚だ疑問だ。と言うか壮真は常にこんなんだし人生考えてばっかじゃ辛いなんていう程考えているとは思えない。最早呆れてを通り過ぎて凄いと思う。
「あっ。その顔は呆れてを通り過ぎて凄いと思うって顔だな?」
ニヤリと笑って言ってきた。当たってるのが腹立つ。
「そんな苛々すんなって。お前は昔から顔に出やすいんだよなぁ」
昔って程じゃないし、ほんの一か月で何を言っているんだ。それにしても私はそんなに顔に出やすいのかな。何か嫌だ。
「まぁそんな気にすんなよ。」
またけらけら笑いながら私を弄ってくる。これも何時もの事だ。私が考えていると邪魔ばかり。今日も何時も通りの一日が始まった。

三週間後

今日は私の手術がある日だ。此処で良くなら無かったら確実に死ぬ。何時も弄ってくる壮真も最近は弄ってこなくなった。こうも静かだとつまらない。考え過ぎて嫌な事しか頭に思い浮かばない私が嫌だ。壮真が話しかけて来ないのに苛立つ。話しかけられて苛立っていたのに、邪魔しないで欲しいと思ってたのに今ではこんなに話しかけて欲しいなんて。かと言って私から話しかけるのは癪だ。一体どうしたって言うの?何時も元気で毎日弄ってきてたじゃん。

八時間後

手術は無事成功した。これからは良くなって行くだろうと。私はどうやらまだ生きられるらしい。
「手術、どうだったよ」
久しぶりに声を聞いた気がする。その声は記憶より弱々しかった。
「成功したって」
「そうか。良かったな。」
「うん、、」
「、、、、、、、、」
「、、、」
沈黙が続く。何時もウザい位元気だったじゃん。何か喋ってよ。
「なぁ、一つ最後に聞いてくれないか?」
最後?最後って何?そんな事言わないでよ。私だって良くなったんだから壮真なら楽勝でしょ?ねぇ。
「何?」
言いたい事は沢山あったけど何とかその言葉を捻り出せた。
「俺、お前の事好きだったんだよ。」
「なっ何を言っ」
顔から火が出そうな位赤くなったのも束の間。口に人差し指を置かれて黙らさせらせた。その次の言葉は信じられない物だった。
「お前は生きられそうで良かったよ。本当に。俺はもう駄目みたいだ。」
どうしようも無いと言ったふうに笑って話す壮真。こんな姿は一度も見た事がなかった。
「医者と親の話、聞いちまったんだよ。もう無理だって、」
「本当はさ。もう俺も分かってたんだよ目の前が暗いし寒いし身体が上手く動かせねぇ。」
そんな事一度だって言わなかったじゃん。
「死ぬのが怖くないかと聞かれたら嘘になるが。最後に紬に好きだって言えたしもう悔いはないからな!」
何よ、それ。ふざけないでよ。一人で勝手に伝えて。
「紬はちゃんと生きてくれよ。」
感情を整理している間に聞こえたこの言葉が最後に聞いた壮真の声だった。

次の朝

起きると壮真はもう既に死んでいた。その時漸く気づいた。気づいて、しまった。私も壮真の事が好きだったんだ。あの時の違和感の理由も壮真が話しかけて来れなくて苛立った理由も気づいてしまった。私まだ壮真の告白に答えてない。生きてくれだなんて。壮真が居ないこの世界で。ねぇもし私の言葉が聞こえてるんなら伝えたい言葉があるの。

ー私も貴方の事が好きでした。どうか私と付き合ってくれませんか?ー

聞こえてなくても。来世ではきっと貴方と結ばれる様に。それまで忘れないよ。貴方との思い出と共に生きてみせるから。

2/12/2026, 1:59:10 PM