ナヅナ

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        この場所で
 何もかもが久しぶりで懐かしかった。電車に乗って、そこから1日に2回しか来ないバスに乗って帰省した。半ば絶縁するかの様にこの場所から都会に出て数年。朧げだったのに辺りを見る度に思い出が浮かび上がって来る。あんなに遠くに見えた大人たちのその光景は当たり前にしか思えなくて、当時好きだった公園の遊具はもう撤去されていて。この場所は懐かしいとは思うもののあの頃とは随分と変わっていた。
 都会に出てブラック企業に入って精神を病み暫くしてから父が亡くなったのだと母が泣いて電話してきた。嫌いだろうけど最後くらい顔を出しに来てって。精神を病んでから何もやる気が起きなかったけどこれだけは行かねばならないと思った。
 実家に着くと母が出迎えてくれた。母は最後会ったとりより痩せ細っていたし大きかった家は小さく見えたし父は穏やかに眠っていて別人の様だった。父はこんな風だっただろうか、母はこんな表情でこんな姿だっただろうか。きっと昔から私は私の事しかずっと考えてなくて居なかった。この時初めて本当に私は自分以外の誰かの事を心配して、考えていた。
 

 葬儀が終わって帰ろうとした時、親戚の叔父さんに呼び止められた。母が軽度の認知症だ、と。今はまだ私の事を覚えているがいつか近い未来忘れるだろうことも。最後くらい親孝行を少しでもしたくて介護をする事を伝えた。






























お母さん、今までごめんなさい。これからもこの場所で私が出来る限り居るから。だから、、目を開けてよ、。お母さんもこんな気持ちだったの?ねぇ、私どうしたらいい?ねぇお母さん?私を一人にしないで

2/11/2026, 2:48:08 PM