どこか不思議でふわふわした空間に居た
均等に生えている緑の木々の森を潜り抜けた先には
一昨年亡くなったはずの友人が佇んでいた
僕は友人の名を必死に叫んだ
けれど友人は振り返らない
僕に呆れたのかな
友人はこんな僕なんかを庇って道路の先で飛び込んでトラックに引かれた
僕は見た
ばらばらになった友人の体を
血にまみれた僕の手を
それ以降僕は一度も外に出ていない
出れなかった
僕が外に出る度思い出すから
僕は未だ僕を見ない友人に向かって謝りたかった
でも何故か僕の口は全く開かなかった。
ずっと微動だにしない友人が突然口を開いた
『お前は悪くない。俺がやったことだ。』
『…これ。』
友人は振り向いて僕に小さな箱を渡した
そういえば、事故の日は僕の誕生日だったっけ
箱の中には僕が欲しがっていた腕時計が入ってた
いた。
友人は笑いながら言った
『お前が"こっち"に来るのはまだまだ先だよ。馬鹿。』
僕は言いたいこと全て言いそうになった瞬間光が差し込んできた
…夢か
僕は手にどこか身に覚えのある腕時計を持っていた
夢が醒める前に言いたかったけどお前に向かって言うのは先にするよ
「ありがとう。」
僕は晴れやかな気持ちで腕時計を腕につけた。
卒業式まであと○日というカウントダウンカレンダーをなんとなくぼーっと見つめている
そんな毎日が続くうちにもう卒業式の日
教室は掲示物が全て剥がされていて
寂しく虚しい空間になっていた
新しい生活を待ち望む人とこのままで居たい人が入り交じる
あぁ、もう順番か
緊張で手汗を感じる
練習通りに
前の人と同じように
僕は礼をし、一歩前に立った
あぁ、この証書を貰ったら僕は卒業するんだな
胸が高鳴る
卒業証書を貰う5秒前
怖がりな君。
2cm開いてる扉でさえ怖がっている。
そんな君を僕は面白がって沢山心霊スポットやお化け屋敷に連れて行った。
途中で帰りたいと泣き喚く君を引っ張って色々な場所に行った。
でも不思議なことに。
怖い所に何度も連れて行く僕のことは怖くないんだね。
ふと気づいて君に言ってみた。
君は言った。
「本当は心霊スポットとか、最早怖くて入り口にすら立てない位。
君が"怖い"を和らげてくれているのかもね。」
怖がりな君の表情を見るのが楽しいのに僕が怖いのを和らげじゃ意味ないじゃないか。
さて、次はどこに行こう?
これは僕と君が"怖い"を求めに行く冒険。
『6年生』
長いようで短かった1年間
なんとなく始まった6年生の1学期
班の皆と満喫した修学旅行
やっぱり6年経っても苦手なプールの授業
面白くてノリの良い生徒と先生の会話を聞いているだけでも笑いが込み上げてきた
6年生の夏休みは大きく自分を変えた
明確に将来の夢を持った
今でも大好きな推しにも出会えた
成長した分今までの生活に後悔を覚えることも多々あった
だからこそこの6年生の学校生活は後悔しない1年間にしようと思えた
2学期が始まり
音楽会と運動会の練習が始まった
綺麗にソプラノとアルトが重なって奏でているこの声は"大切なもの"を彷彿とさせた
運動は苦手だが皆が運動会の練習を頑張っているのを見て自分も頑張れた
6年生全員が本気を出してできた組体操は采で幕を閉じた
僕も6年生に憧れていたから
優しくて勇敢な6年生を1年前、5年生の自分は見ていたから
自分もそんな6年生になれたら良いなと心から思えた
3学期が始まって
いよいよ卒業に近づく時期になった
しかし自分はあまり卒業を実感していなかった
クラスで過ごすこの時間が当たり前となっていたから
だがそんな自分を傷つけるように残酷に日々の生活は過ぎ去っていく
新しい生活が始まることによる期待と
このままで居たいという悲しみが入り混ざる
目を瞑るだけ蘇るこの思い出は
例え誰かが忘れても決して僕は忘れない
長いようで短かったこの1年間を