hane

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5/26/2024, 2:30:02 AM


〝貴方〟へ

お久しぶりです。元気にしてましたか?

手紙なんていつぶりでしょう。ちょっと字が下手になったかもしれないけれど、許してください。

雨は、もう止みましたか。おそらく、私の予想では止んだのではないかと思います。

こちらの雨は、止んでいません。あれから五年経った今でも、枯れることはありません。

そんな私はまだ、子供ですか。

もし良ければ、答えを教えてください。

それと、ごめんなさい。

私が貴方に期待と責任を押し付けてしまったせいで、たくさんの人が傷つきました。

選択をしたのは、貴方です。
でも、その選択をすることになってしまった理由は、私です。

ごめんなさい。
ごめんなさい。

最後に

もし仮に、貴方の雨が止んでいなかったとして。急に悲しくなったり、無性に泣きたくなったりしたら、我慢は決してしないでください。

手紙も、お好きなタイミングで構いません。

貴方の雨が止んでいることを願っています。

               〝私〟より




#15
#降り止まない雨





5/4/2024, 2:21:51 PM


耳を澄ますと、

小鳥のさえずり。

車が道路を走る音。

どこかの子供のはしゃぎ声が聴こえてきた。


耳を澄ますと、

木枯らしが吹く音。

木の葉が風に揺れる音。

どこかの街の音楽が聴こえてきた。


耳を澄ますと、

カラスの羽ばたく音。

遠くで鳴るサイレンの音。

どこかの誰かが物を投げ捨てる音が聴こえてきた。


耳を澄ますと、




もう、なんにも聴こえてこなかった。




#14
#耳を澄ますと





4/26/2024, 1:11:52 PM


傷つかないふりをしていても、心はすでに傷を負っている。

分かっているからこそ、それを認めたくないんだ。

相手の些細な一言で、
周りの視線で、
自分の失敗で周りに迷惑をかけて、
〝心が傷ついた〟ってことを認めたくない。

私はもっと強いはず。
こんなので傷ついたりしない。
思い込めば思い込むほど、どんどん苦しくなってしまう。
全部投げ出して、大声で叫びたくなってしまう。

漫画やアニメのあの子みたいになりたい、だとか。
そんな願望を持って日々を過ごしてみても、どうもうまくいかない。

周り全てが敵に見えてしまって、恐ろしい。

好きなことをしている時、私の心は無敵状態だ。自分は最強だと思える。どんなことだって怖くない。
だけど、その無敵状態は長くは続かない。
次の日になって、活動しなきゃならなくなると、反射的に(ああ、起きたくないな)って思ってしまう。

日々はこんなにも辛いのか。
私だけがこんなに苦しいのだろうか。

褒められた時も、怒られた時も、どんな表情をするのがいいのか、分からない。
ほとんど誰もそんなの気にしてないんだろうけど。

いざとなったら私は言い返せる。
私は一人でも大丈夫だから。
そんなことを思っている割には、周りを気にしてしまって、結局〝本当の自分〟は出せないまま。

自分らしさを大事にするってすごく難しい。
周りの人が言うことも、正解なのか分からない。

毎日を過ごす中で、自分がどうあればいいのか、まだ分からない。




#13
#生きづらさ





3/23/2024, 9:01:30 AM


あーあ

ばっかみたい。

最初から信じなきゃよかったのに、なんで期待なんかしちゃったんだろう。

「なんかあったら言ってよーうちらはあんたの味方なんだから」

ふん。

何が味方だよ。
最終的には裏切ったくせに。

私のことなんか便利なやつだとしか思ってなかったくせに……。

友達関係なんていつでも壊せる。
私も、いつかはこのグループから追放されるんだろうと思っていたけど。

案の定か。

分かっていたはずなのに、冷たく刺さるような視線を前にしたら、体が動かなくなって。

毎回漫画とかで、こういう場面の時に何も言えなくなる主人公とか見てるとイライラするのに、

本当に何も言えなかった。

そんで後々泣いた。

泣いた理由には、あの視線から受けた恐怖も混じっていたんだろうな。

……

なんかこんなんでぐちぐち悩んでるのもばからしく思えてきた。

もういっそぜーんぶ忘れてしまえ!




#12
#バカみたい





3/7/2024, 12:43:58 PM


やあ。初めましてだね。
久しぶりに君みたいなヒトを見た。

わたしの名前?〝××〟だよ。

ところで大丈夫?だいぶ息が切れてるけど、逃げてきたの?

そっか、それは大変だったねぇ。

何も知らないのに同情なんてするなって?どうしてわたしが〝何も知らない〟立場だと思ったの?

傷一つ負ってないのはおかしい……確かに、そうだね。
でもわたしはずっと隠れてたんだ。やっと音が止んだから、出てきただけだよ。

うん、そうだね。街中ぶっ壊れちゃったし、もういないヒトもたーくさんいる。

空は相変わらず真っ白だね。
もとは青色だったのに。残念だ。

もう昼か夜かも分からなくなっちゃったね。
ところで、君の家族は無事?

そう。わたしは待ってる〝なかま〟がいる。
きっとみんな〝にこにこえがお〟で待ってるよ。

ねえ、君。
さっきから思ってたんだけど。




もう気付いてるね。




わたしが誰か。




君はきっと勘がいいから。




最初から疑ってたもんね。




そうだよ




わたしは〝××〟。




もうここで生きているヒトは君しかいない。




ねえ

君は

生きたい?




……まあ、どちらにしろ、ごめんね。

〝なかま〟から言われてるから。




最後に質問?

君はもう自分が死の間際にいることが分かってるんだね。いいよ、好きなだけ言いな。

わたしが、これをしたくてしてるのかって?
うーん、どっちでもないかな。
わたしは、全て〝なかま〟の指示通りに動いているだけ。
〝なかま〟の中ではこの行いが『正しい』。そしてそれはわたしもちゃーんと脳にインプットされてるからね。

もういい?

え?




わたしを見たことがある

って……

……。




もういいでしょ。

気が済んだでしょ。

死に対する恐怖が微塵も感じられないから、怖くないんでしょ。

ならいいじゃない。
どうせ、運命は変わらないよ。

ただちょっと終わらせるのが早まるだけで。

ずっと一人、孤独と恐怖に耐え続けるより、マシでしょ?

うん、そうだね。




ごめんね。








彼女はそう言うと、手に持っていた何かで自身の頭を撃ち抜いた。
音はしなかった。
あまりにも静かな死だったから、一瞬演技なのではないかと思ったけれど、

彼女は二度と目を開かなかった。

ああ。

〝初めまして〟なんかじゃない。

彼女はどこまでも強がりだ。
彼女自身も気が付いていたんだ。

本当はこんなことしたくなかっただろうに。

彼女は、最初、私に、初めてあった人のように接した。

彼女は一体、どこまで私を守るつもりだったのだろう。

「あーあ……」

どこまでも続く瓦礫だらけの地面。
灰と砂が混じった雨の降る真っっ白な空。
地面に横たわる彼女。
もう、ヒトはいない。

「私、本当に全部失っちゃった……」

泣くつもりはなかったのに、気が付けば涙が頬を伝っていた。

全てを失った無力感が私を襲った。

「……ごめんね」

ぽつりと呟いた。

誰にも届かないはずの言葉を、ただ、彼女に伝えたかった。

「本当、どこで間違えたんだろうなぁ」

彼女の顔は今にも寝息が聞こえてきそうなほど綺麗すぎて、怖かった。

私は瓦礫に横たわる。

何処かでサイレンの音が聞こえた気がした。

目を閉じると、全身から力が抜けていくのを感じた。

そして、私は眠りについた。




そして、彼女は世界の終わりを告げた。




#11
#「ごめんね」





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