ナナ

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3/28/2025, 12:35:11 PM

小さな幸せ

 今日は金曜日。明日は学校も部活もなく、完全オフの日だ。今週もやりきったぞー、という達成感を感じながら帰路につく。少し寂しげな夕焼け空に、烏の黒がよく映える。
 歩いていると、コンビニが目に入る。…あれ?何か忘れているような?…そういえば、今日は新作スイーツの発売日!楽しみにしていたのに、忘れるところだった。危ない…
 コンビニに入って、スイーツのコーナーを見に行く。お目当てのものは…あった!商品をかごに入れ、ついでに今日の晩御飯も見てみる。すると、私の大好きなオムライスが最後のひとつ、というところだった。すかさずこれもかごに入れる。
 そして会計を済ませ、店を出る。ああ、今日はラッキーだったな。オムライスとスイーツ、早く家に帰って食べたいなあ。そんなことを考えていたからか、何時もよりご機嫌な帰り道だった。

3/25/2025, 1:17:25 PM

記憶

 ある女の子がいた。その子は優しくて、頑張り屋さんで、笑顔が素敵なクラスの人気者。いつもたくさんの友達に囲まれていた。
 対して、私は地味で、いわゆるモブみたいな存在で。友達なんて一人もいなかった。

 ある時、彼女が私に話しかけてきた。
 「あの、ちょっといいかな?突然ごめんね、ここの問題が分からなくて…教えてもらいたいんだ」
 彼女が指さしたのは先程の数学の時間の応用問題。私は勉強だけは得意だったので、授業中に解き終えて、余った時間で次の授業の予習をしていた。休み時間もほぼ読書か勉強に費やしているので、周りからも勉強が得意だと思われている。だからこそ、彼女は私に声をかけたのだろうな、と思いつつ、私は、
 「えっと、ここの問題はまずこの図形を二つに分けて…」
 と、解き方を説明する。
 「…あー!そういう事かあ!ありがとう!」
 彼女は明るくそう言った。
 「どういたしまして」
 私はそう答えた。
 「ねぇ、もし良かったらまた教えてくれないかな?わたし、数学あんまり得意じゃなくて…あなたの説明、すっごく分かりやすかったから!」
 無邪気な笑みを浮かべ、彼女はそう言った。
 「わ、私で良ければいつでも聞いてください…!」
 必要以上の会話をするのは久しぶりだった上、相手はあの人気者。少し緊張しつつ、そう答えた。
 「うん、よろしくね!」
 
 それ以来、私と彼女は話すことが増えた。最初は分からない問題のことだけだったが、だんだんそれ以外の会話も増えてきて、距離が近くなっていった。彼女と過ごす時間は楽しく、心があたたかくなるのを感じた。私たちの関係を、「友達」と呼びたいと、そう思うようになっていった。
 …だからこそ、辛かった。どれだけ彼女と話しても、仲良くなっても、彼女にとって、私は沢山いる友達のひとりにすぎない。彼女が一番幸せな顔をしているのは、他の子達と一緒にいるときだ。私は、特別なんかじゃない。私は、彼女の一番にはなれない。痛む心を隠しながら、彼女と笑いあった。

 そうして過ごしているうち、あっという間に卒業式を迎えた。なんの偶然か、彼女とは三年間クラスが一緒で。彼女との仲が途切れることはなかった。
 私の思い出には、ずっと彼女がいた。つまらなかった日々が、彼女によって彩られていた。彼女は、私にとっての一番だった。特別だった。
 ここを卒業したら、彼女とはもう、話すことはないだろう。悲しいけれど、それでいい。きっと、彼女の記憶に私は残らないけど。彼女との日々は、宝物として、胸の奥底にしまっておこう。
 彼女とは違う道を、一歩踏み出す。歩いているうちに見えた、どこかのうちの庭に咲いた、スイートピーが綺麗だった。

10/11/2024, 12:56:41 PM

カーテンを閉めた。
私の弱いところも、
汚いところも、
誰にも見られたくなくて。

カーテンを閉めた。
私の嫌いな人も、
私を嫌いな人も、
誰も見たくなくて。

カーテンを閉めた。
どろどろの思いを抱え込んだまま
誰とも会いたくなくて。
ひとりにしてほしくて。



でも、カーテンを開けて欲しかった。
どうか気づいてくれ、と。
どうか見つけてくれ、と。
私はきっと、これからずっと、
そう思い続けるだろう。

5/29/2024, 10:07:49 AM

半袖

毎年、この時期になるとだんだん暑くなってくる。
半袖にしようか、長袖にしようか…
毎年、この時期になると少し迷う。
自分は暑く感じるんだし、半袖にしよう。
まだ長袖の人も多いし、周りに合わせよう。
脳内には天使と悪魔…とは違うけれど、相反する考えを持つ2人が現れる。
結局、長袖にした。暑くなったら袖でもまくればいい。
…と朝は思っていたが、想像以上に暑くなってしまった。
袖をまくっても暑い。ボタンを少し開けても暑い。
嗚呼、やっぱり半袖にするんだった…




これが先週末の話。今週こそは、失敗しないぞ…!
と意気込んだ。朝は少し冷えるが、日中は暑くなると昨日の天気予報で聞いた。今日は半袖にしよう。
…と、朝は思っていた。そして、後悔した。…想像以上に涼しかったのだ。
肌寒くて、少しだけ腕をさする。天気予報は当てにならなかった。
うぅ、やっぱり長袖にするんだった…





どっちにしろダメな時はダメ。それなら…
両方持っていけばいい!
そうだわ。なんで思い浮かばなかったんだ。
ということで、明日は両方持っていくぞ!
今度こそは絶対大丈夫だろ!
そう考えながら帰路に着く。

…明日にはそう考えたことをすっかり忘れ、また失敗してしまうなんて、私は思ってもみなかった。

5/6/2024, 11:42:45 AM

「明日世界が終わるなら」

今日眠って、明日目覚めることなく世界が終わったら。
わたしは毎晩そう考える。
辛くて悲しいこの日々も、一瞬で終われば楽だろうな。
最期をみんな一緒に迎えられたら、寂しくないだろうな。

きっと今日眠っても、平然と明日を迎えるんだろう。
幸せなんてない明日を、わたしはどう過ごせばいい?
希望という名の光はとうの昔に消え去っていて、
絶望とはいえない、仄暗い未来だけがそこにある。

明日世界が終わるなら。
それは誰かの絶望で。
それは誰かの悲しみで。
それでも誰かの、最上級の幸福なんだ。

時計の針は残り90秒。
地球の寿命はまだまだ先。
世界がなんで終わるのかは分かんないけど。
せめて、最期のときだけでもきれいな世界になってれば。
わたしはそれだけで十分幸せ。

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