「君と出逢って」
ものすごくけたたましい音が辺りに鳴り響いた。
え、何?うるさいんだけど、と思いつつ、気になって外に出てみた。そしたら、思いがけない光景が広がっていた。
UFO。UFOが墜落していた。…………?理解が追いつかない。
「ゆ、夢…だよね?」
頬をつねってみたけど、めっちゃ痛い。ということは、これは現実…?
えーっと、コレ、どうしよう…
少し悩んでみた結果、中を覗いてみることにした。もしかしたら、宇宙人とか乗ってるかもだし。ドアらしきものを開けてみる。すると、中には1人の女の子が乗っていた。ティファニーブルーのナチュラルボブで、白を基調とした、蛍光色のラインが入ったパーカーを着ている。どうやら気絶しているようだ。…このままにしておくのも何だかなぁ。
…とりあえず、家に入れよう。
自室のベットに寝かせる。いつ目覚めるか分からないが、まだここに居た方がいいだろう。
――――30分後。
「…んぅ、よく寝た…ってアレ!?ここどこ!?」
どうやら目が覚めたらしい。ひとまず安心だ。
「おはようございます。あなたが乗っていたUFOが家の前に墜落して、あなたは気絶してたんです。それで、1度私の部屋で寝てもらってました」
「UFO…宇宙船の事だよね!そうだったんだ…ありがとう!あなた、親切なんだね!あたし、ステラっていうの!あなたは?」
「佐藤葵です」
「葵ちゃん!よろしくね!あ、ところで、あたしの船、見てもいいかな?」
「もちろん。案内しますね」
「ありがとー!」
私たちはUFOのところへと向かった。
「あちゃー、これは修理が必要だー…」
やってしまった、というような声だ。
「これって、どのくらいで修理できそうです?」
「うーんと、最低でも1ヶ月はかかるかな…幸い、修理に必要な道具は持ってきてたから部品とかはあるんだけどね、直さなきゃいけないところが多すぎるなぁ…」
「そう、ですか…一応聞きますが、頼りにできる人はいますか?」
「残念ながら…通信機があるから、あたしの星の人に繋がるかもしれないけど…地球には頼れる人、いないんだよね」
「…UFOが直るまで、うちに泊まりますか?」
「っえ、いいの?家族の方とかは?」
「今、両親は出張してて、しばらく帰ってこないんです。兄弟もいないし、あなたさえ良ければ、うちに泊まっていってください」
「…ありがとう!それじゃ、お言葉に甘えて、泊まらせてもらいます!不束者ですが、よろしくお願いします!」
「…ふふ、なんかプロポーズみたい。こちらこそ、よろしくお願いします!」
こうして、私とステラのドタバタな毎日が始まったのだ。
「2人だけの秘密」
私は夢を見る。小さな頃から、ずっと。
夢の中には、何時もある女の子がいる。私と同じくらいの歳の子。初めてその夢を見た時から、私に話しかけてきた。一緒に遊んで、お菓子を食べて、いっぱい笑って。私が熱を出して寝込んでいた時も、夢に出てきて、私を笑わせてくれた。本当に幸せだった。たまにその子がいない時もあったが、その時は決まって手紙が置いてあった。
「ちょっとでかけてくるね!きみがすきなもの、たくさんおいておいたから、それであそんでね!」
と言った感じだ。これは私が小さい時のものだが。
そして、決まって夢から覚める直前に、
「わたしの事は、誰にも言わないでね。2人だけの秘密だよ!」
と言われるのだ。なぜそんなことを言うのかは分からないが、特に誰かに言う必要もないので、話していない。
この幸せな夢が、終わることなく続いてくれたらと、ずっと思っている。
だが、少し前に、こんな内容の手紙が置いてあった。
「ごめんね、暫く会えなくなっちゃった。お別れでは無いから、安心してね。」
それから、私はあの夢を見ていない。日常生活に支障が出るわけでは無いが、やっぱり、あの子がいないのは寂しく感じる。
そんなことを考えていたある日の夜。私は久しぶりに夢を見た。
「久しぶり〜!ごめんね、ずっと会えてなくて」
「ううん、大丈夫。何かやることでもあったんでしょ?」
「うん、まあ、ね」
…なんだか寂しそうな気がする。何か悲しいことでもあったのだろうか。そう考えていると、
「今日は、きみに大切な話があるんだ。…実はね、もう会えなくなっちゃうんだ」
…は?
「な、何で?私、何かしちゃった…?」
「ううん。きみはなんにも悪くないよ。これは、元々決まってたの。きみは明日で17歳の誕生日を迎える。その日の朝6時になったらバイバイだって、そういう運命なの」
急にそんなこと言われたって、理解も、納得も出来るわけない。
「やだよ、何で、何で…!」
涙がこぼれる。だって、17年も一緒にいたんだよ。お別れなんて嫌だ。あなたがいなくちゃ、私は、私は…!
「っ、わたしだって、わたしだってお別れなんてしたくないよ!でも、どうにも出来ないの…」
あなたの目からも涙がこぼれた。あなたの泣いてるとこなんて見たくない、と思うと同時に、なぜだか、少しだけ、嬉しいな、と思ってしまった。私のためにあなたは泣いてくれるのだと思うと、私の中で何かが震えた。
「…そっか、そっかぁ。…仕方ないんだよ、ね」
「…うん、ごめんなさい」
「あなたが謝る必要なんてない!私こそ、我儘言っちゃった。ごめんね」
「ううん。わたしだって、同じ気持ちだったから。…わたしね、きみが秘密を守れたら、きみと私のお願いごとを、ひとつだけ叶えられるようになってるんだ。だから、わたしは…いつか、きみとずっと一緒にいられるようになりたい。多分、ずっと先のことになっちゃうけど…」
「私も、あなたとずっと一緒にいたい!どれだけ先でも待つよ。あなたは、私の…親友、だもん」
「…ありがとう。…もうすぐ6時に、きみが生まれた日の朝になる。最後に言わせて。わたしの親友。わたしは、またきみと会えるまで、ずっと、ずーっと、きみのことを見守ってるよ」
「っ、うん…!待っててね。大好きなあなたのこと、絶対に忘れない!」
そう伝えると、あなたは、泣きながら微笑んで、
「─────!」
何かを言って光に包まれ、消えていった。
数十年後。私は天寿を全うしようとしている。大切な人との別れには寂しさも感じるが、それ以上に、あなたと会える喜びに包まれている。この先に待つあなたとの日々を楽しみにしながら、目を瞑った。
赤子の泣き声がふたつ聞こえる。1つは自分自身のもの。そして、もうひとつはあなたのもの。願いは本当に叶った。私たちは双子として生まれてきた。きっとこれから楽しいことも、辛いことも沢山待っている。それでも、あなたと私なら乗り越えてゆける。2人だけの秘密を、胸に抱いて。
「優しくしないで」
「おはよう!」
ひとりぼっちで、勉強も運動もダメダメなわたしに話しかけてくれて、
「一緒に食べよう!」
いっしょにご飯食べてくれて、
「一緒に行こ!」
ずっとそばにいてくれて。
うるさいだけの教室が、少しだけ暖かく感じるくらいに幸せだ。
どうしてそんなに優しいの?
わたしのこと好きなのかもって、勘違いしちゃうじゃん。
でも君がわたしを好きなわけない。
わたしのことが好きな人なんていたことない。
どうせこの思いを打ち明けたら君ははなれてしまうんだ。
だから、今はまだこのままがいい。
この日々が、いつまでも続いたらいいのに。
そんな日々もあの子が転校してきて崩れた。
あの子は勉強も運動もなんでも出来て、すぐにクラスの人気者になった。
君はあの子の近くで笑ってて、
わたしとは全然話してくれなくなって。
君に相応しいのはわたしじゃないんだって、
君が好きなのはあの子なんだって、
気づいてしまったんだ。
結局わたしは変われなかった。
元通りになっただけ。
君がいなければ、ずっとひとりだったはず。
そう自分に言い聞かせるのに精一杯。
君との甘くて優しい日々は、思い出になってしまった。
こうなるから、優しくなんてしないで欲しかった。
ベットに寝転んで、泣きながら眠りにつく。
「おはよう!」と君が言う。
他の誰でもない、わたしに向けて。
「一緒に食べよう!」
他にも友だちなんてたくさんいるだろうに。私のところへ来てくれるくらい、君は優しい人なんだ。
「一緒に行こ!」
移動教室のときですら、わたしと一緒にいてくれて。
ああ、わたしは幸せすぎたんだ。十分過ぎるくらい、君にもらっちゃったんだ。
だから、わたしの幸せはもう終わり。もう、他の誰かにゆずらなきゃ。あとわたしができるのは、君の幸せを願うことだけ。そうなんでしょ?ねぇ…
目が覚めた。
さっきまでのは全部夢。
これで、わかった。
君はあの子と結ばれて、ハッピーエンド。
わたしはそれを見てるだけ。
そして、おめでとうって言って、わたしはそれでおしまいなんだ。
もう、君のことなんて忘れちゃえばいいんだ。
きっと、絶対、それがいいんだ。
制服に着替えて、いつも通り学校へ。
あの子と話す君を横目に、自分の席に座る。
教室は五月蝿くて、冷たく感じる。
いつかのわたしと一緒だ。笑えてくるくらいに。
君への思いは手放した。
心はすっきりして、でもすごく冷たい。
…ああ、世界はもう優しくなんてしてくれない。
こんなことになるのなら、最初からやさしくしないでよ。ねぇ!
「カラフル」
大好きだよと伝えれば
ちょっぴり照れるきみの横顔
わたしもあなたが大好きだって
伝えるきみは真っ赤だった。
快晴のもとで走り出す
あついあついと言いながら
駄菓子屋によって買ったラムネは
透き通るほど青かった。
木の葉にしずくがきらきらと
かがやきみとれる昼下がり
若葉の成長を祈りながら
緑を目に焼き付ける。
夕暮れのもとでただひとり
烏のなきごえが耳に残る
何故かおさないあの日々を
思い出すのはオレンジ色。
夜空に浮かぶ三日月と
満天の星々が目に映る
夜をみまもるものたちは
闇を金色で照らしている。
海底の景色がみたいから
どんどん深く潜ってく
ついにたどり着いたそこには
藍色の世界が私を待つ。
あなたによろこんでほしくて
あなたの好きな花を見に
優しく忠実なあなたは
この紫の花に似ている。
雨上がりの空を見上げ
ずぶ濡れのまま笑い合う
空もきみとの思い出も
全てがカラフルな虹みたい。
「楽園」
それは、色とりどりの花に囲まれてるような
それは、美しい音楽に包まれてるような
それは、神秘的な光景を目にしたような
それは、大切なひとと一緒にいるような
それは、純白のヴェールに覆われたような
それは、天から降りそそぐ光のような
それは、透明で清らかなような
それは、私だけの天使のような
それは、秩序が保たれたような
それは、唯ひとりにゆだねるような
それは、踏んづけられた意思のような
それは、みんなみんな同じような
それは、ケーキにかかるラズベリーのソースのような
それは、おおきなおおきなシャボン玉のような
それは、お気に入りのリボンのような
それが、わたしだけの楽園。