お風呂から鼻歌が聴こえる
愉快な恋人に頬が緩む
同じシャンプーの香りを纏わせた君に
見慣れているはずの心がまた胸が高鳴った。
誤魔化したくて目を逸らす
同じ歌を歌って今日という余韻に浸る
感情が移る瞬間を隣で見られる幸せを
今はまだ引かれそうで言えない
歌
20歳になった
年齢は数でしかないけれど
10代が終わってしまった喪失感は拭えない
青年期が終わり
大人へ変わってゆく
嬉しいような寂しいような
今になって全力で楽しめの意味が分かる気がする
早かった。
自分も小さな子を見て思う側になってしまうのだろうか
あの全てが輝く世界はもう見れないのだろうか
年上の言葉を素直に受け取ることにしよう
戻ってこない時間、忘れる記憶
皆が通る道だからこそ恐怖を感じてしまう
変わらない事のほうが多いのに
なぜこんなことを考えているのだろうか
人生第3章の始まり
さぁ、お酒を飲んでみよう。
昨日と違う私
記憶を遡る
昨日置いた鍵がないことに気が付いた
どこにしまったっけ
どの鞄を使ったっけ
忘れた、
幸い外では使わないものだから
きっと家の中にあるだろう
鍵が見つかるまで合鍵使います。
しょうがないこんな日もある
母はこんな日しかないよと言う
鍵の乗った船は未だ記憶の海を漂う
記憶の海
人間が手を加えていない世界
未知不気味恐怖廃墟
つまらないもので存在を印象づける
そのくせ都会に疲れたからと逃げてくる
ある人は縄を、ある人はテントを持って、
都合の良い生き物である。
──景色が圧倒的だった
──心霊現象起きるらしいよ
拡散されれば人が集る
ここもまた汚されるのか
死神がポーンとピアノを弾く
景色が好きな老人が、
廃墟に住む綺麗な恋人が、
熊に乗った子どもが、
ピアノの周りへとやってくる
静かな森が、戻りますように。
密かな望みが届くことを願って。
静かな森へ
神様は時々残酷である。
向日葵の咲く季節に人を摘む。
その人は人より少し乱暴で、忘れっぽくて、
人見知りなくせに慣れれば気さくで、
何よりも本が好きで誰よりも世界を愛していた
そんな人が突然帰ってこなくなってしまった
難病だった。と
悲哀、混沌、動揺、拒絶
突然の出来事で血管がはち切れそう
難病なんて聞いていない
いなくなってから考えが巡る
あの時の言葉もあの時泣いていたのも
全部この世から、この世からいなくなるから、
徐々に生きた心地が消えてゆく
もっと何か思い出を、、
「隠しててごめんね――」
あぁ、だめだ読まなきゃ良かった
流れる涙にインクが滲み、
声が届かない虚しさで息が詰まる
これから一人でどう過ごせと言うんだ
手紙なんかより君が欲しい
そんなことが3年前
向日葵をみるとよみがえる
神様は時々残酷である。
手紙を開くと