25日目【溢れる気持ち】
よく頑張ったし、耐えた。
正しくは「なんでここまで頑張らなきゃならんのだろう?」という気持ちで、辛い日々ではあったけど、自分が納得できたから。結果は合格だ。
そして今、全身の力が抜けて、ホッとした気持ちだ。
もう、辛い状態と向き合わなくていいのだ。
満足感でもなく、達成感でもなく、安心感に満ち溢れている。
ああ。終わった。よかったって。
24日目【Kiss】
「キッスしぃましょっ♪キッスしぃましょっ♪キッスキッスキッスキッスキッスしぃましょ♪」
おねいちゃんは、いつも変な歌を歌いながら、あたしにKissしてくる。
あたしもお返しに、おねいちゃんのお口をペロリンするの。
おねいちゃんがあたしを大好きなように、あたしもおねいちゃんが大好きなの。
おねいちゃんにお利口さんって言われたくて、あたし、頑張っているの。でも時々、いたずらして、いろんなもの壊しちゃうの。
怒られるのはわかっているけど、その時は楽しくて忘れちゃうの。
怒られたら、お手手を振って、「怒らないで」って言うの。そしたら怒ってたおねいちゃんが笑いだすの。
「ほんとにあなたはお利口さんね」って。
あたしね、いつの間にかおねいちゃんよりも先に、おばあちゃんになっちゃった。
お利口さんにしていたら、ずっと一緒に居られると思ってたけど、無理みたい。
おねいちゃん、泣かないで。いつもの変な歌歌って、あたしにKissして。
しばらく会えないけど、また遊ぼうね、あたし、できるだけいたずらしないで、お利口さんにしてるからね。
おねいちゃん、大好き(ペロリン)
23日目【1000年先も】
小説よりエッセイが好き。
だから紫式部より清少納言が好き。
さて、このお二方、1000年先の私達について、どのようなイメージを持っていたんだろう?
「あはれ」の紫式部は、自分達よりも、幸せでない未来人を予想していたかも。戦争、天災、あはれなり。
「をかし」の清少納言は、自分達よりも、よりよい暮らしをしてるって予想してたかも。人工知能、グルメ、いとをかし。
1000年先も、人間の営みは、「あはれ」だったり「をかし」だったり、繰り返しながら、生まれて死んでゆく。
いや、人類は存在していないかもしれない。あはれなり。いやいや、不老不死になっているよ。いとをかし。
そんなことを考えていたら、人間はなぜ、人間として「今ここ」にいるんだろうね?
22日目【勿忘草】
熱帯夜のある日、ふと、22歳の夏に恋していた彼を思い出した。
私より2つ年下の20歳で、バイクが生きがいの理系男子だった。
だった一度だけ、今日みたいな暑い夜、彼とファミレスで食事した時は、夢みたいな気持ちだった。
でも、私の思いは叶わなかった。だって彼には私と同い年の年上の彼女がいたから。
その後は、彼に会うことは無かった。
携帯もまだみんながみんな、持っていなかった時代。
連絡の取りようも無かった。
だけどどこかで「また会える」って確信してた。
あれから25年。偶然、SNSで彼を見つけた。
良い歳の取り方をした、素敵な壮年男性になっていた。
何となくメッセージを送ったら、返事がきて…
私達は、どちらも独りだった。
今日、あなたは、私に勿忘草の花束をくれた。
そして、小さな箱を開けて跪いた。
私達は、時間がかかったけど、「真実の愛」を見つけた。
21日目【ブランコ】
我が家の目の前にある広場には、ぽつんとブランコがある。
他の遊具はなくて、ブランコだけ。
たまに近くの保育園児がお散歩にやってきて、遊んで行くのだが、彼ら以外に揺られている人を見たことがない。
そんなある日。
スーツ着た若い男性が揺られていた。この辺では見かけない顔だ。
にこやかに揺られているから、悩みを抱えて…的な人ではなさそうた。
だから私も声をかけずにそっとしておいた。
就活中の大学生かな?休憩してるのかな?
ただ揺られている彼を見ながら「可能性が無限大」というのが、うらやましく感じた。