「あっ、そのチョコめっちゃ美味しそう! 一個ちょうだーい」
舞華ちゃんが今日も私のお菓子を狙ってくる。
ぐぬぬ……最後の一個なのに……
「この飴と交換するからお願い!」
図々しくも私の目の前に手を出し、チョコをもらう準備をしている。
まるで、くれると確信しているかのように。
その飴嫌いなんだよなー。
しかも、サイズ小さすぎないか?
「あー、うん。いいよ」
私は仕方なく交換をした。
少しずつ大切に食べていたのに……
「ありがとー。めっちゃ美味しい〜」
私が食べるはずだったのに。
はっきりと「嫌」と言えない自分にも腹が立つ。
でも、部活が一緒で気まずくなると困るしなぁ。
都合の良い時だけ、話しかけてくるのもやめて欲しい。
チョコを手放す勇気と、舞華ちゃんとの縁を手放す勇気が必要かもしれない。
お題【手放す勇気】
「あなたは私にとって、酸素のような存在です!」
私は放課後の屋上で、霧岡くんに告白をしていた。
霧岡くんは口を開け、ぽかんとした表情をしている。
もうちょっと普通の告白の言い方があったかも……
焦りながらも私は言葉を紡いでいく。
「酸素はいつも身近にあり、なくては生きていけない存在ですよね? 霧岡くん、あなたも一緒です!」
私は一生懸命に言う。
「なので、付き合ってください!」
目をぎゅっと瞑りながら、右手を前に出す。
「ふふふっ、もちろん」
え? 成功したよね?
私は嬉しさのあまり、口元がにやけてしまう。
だが、少し疑問が浮かんできた。
「なんで少し笑ってたんですか?」
「鈴森さんっぽいな、と思って。まあ、そういうところが好きなんだけど」
「そういうことですか……」
ん? 今、好きって聞こえたような……
「好きだよ。ずーっと前から」
私は顔が赤くなってしまう。
まるで赤く熟したリンゴのように。
お題【酸素】
俺は、あなたのためだけに曲を書き、歌い続けるよ。
この世にいない、あなたへ。
俺が愛した、たった一人のあなたへ。
あなたのことだけを、愛し続けるよ。
今までも、これからも、ありがとう。
お題「ラブソング」
「ねえ、玲斗君ってば! お話してるんだから目を合わせてよ」
喫茶店に私の大きな声が響き渡る。
いつも玲斗君とは目が合わない。
もしかして……私のこと嫌いなのかな……
「なんで目を合わせてくれないのよ」
玲斗君は、顔を赤くしながらもやっと私の目を見た。
「目が合わせれないのは……琴美が可愛すぎるからなんだ! 目を合わせたら顔が赤くなるんだっ!」
え……? 嫌いになったんじゃなかったの……?
つい目が点になってしまう。
私の方も顔が赤く、りんごのようになってしまう。
「な、なんだ。そういうことか〜」
お会計をしようと立ち上がったおばあちゃんが私たちに声をかける。
「あらあら、二人してお顔が赤くなってるわ。かわいいカップルさんね」
にこやかに微笑み、去っていく。
それにより、私たちはより赤面になるのだった。
■■■
彼女たちはまだ知らない。
半年後、結婚をすることを……
めでたし、めでたし。
こっち恋 愛にきて
「38度……」
私は寝転びながら、手に持っている体温計を見た。
『ごめん。風邪ひいちゃったから明日のデート行けないかも。私が元気になったら一緒に行こうね』
彼氏の春斗にスマホでメッセージを送った。
明日は水族館に行く予定だったのだが、熱が出ているのならしょうがない。
「久しぶりに会えると思ったのに……」
最近は仕事が忙しく、あまり会えていなかった。
思わずため息をついてしまう。
ピンポーン
チャイムの音が家に鳴り響く。
「体調大丈夫?」
春斗がやってきてくれた。
私がこっち恋、愛にきてと思ったのが通じたのかもしれない。