~だから、一人でいたい~
少し冷えきった部屋の中、小さな箱に詰められた色とりどりの宝石を手に取る。
どれも大切な物だった。愛おしい物だった。
手放せないはずの思い出だった。
今ではただ美しいだけのそれを一つ一つ床に落としていく。
空に近付いていく箱の中とは対象的に、部屋の中はステンドグラスを散りばめたようになっていく。
最後の一つを床に落とす。虚しさが心を縛り付けた。
なぜだろう、今日は少しだけ一人でいたい。
床に座り込み、空の箱を抱きしめた。
〜澄んだ瞳〜
ふと、視線が重なり合う。
少し戸惑いながらも微笑んでくれたその顔が、脳裏に焼きついて離れない。
ほんの一瞬の出来事。それでも永遠に感じる程の衝撃があった。
痛む胸を押さえつけ、目を閉じる。
その濁りのない瞳に、私が映り込んだ。
その事実が頭を支配する。
まるで足跡ひとつない雪道の上を歩いているかのような気持ちを抱いて、一人小さく笑った。
〜星空〜
ふと見上げた空。
きらきらと頭上で輝く星たちにそっと指を伸ばす。
触れられないとわかっていても、手を伸ばしてしまうのはなぜだろうか。
答えはまだ見つからず、手の中には何も残ってはいなかった。
~この道の先に~
少し歩いて考える。
この道の先には何かあるのだろうか。
行ってみなければわからない。
何もないかもしれない。
それでもまあ何もないことがわかって良かったとおもうか。
気に入った道を歩いていけばいい。
いくらでも行き先はあるから。
〜正直〜
少し指先が触れただけ。
それだけで簡単に心臓がうるさくなる。
「悪い。触れる気は無かったんだ」
心臓の音が聞こえないようにと飛び出した言葉は実際の想いとは遠いもので、いっそ黙った方が良いのではと思ってしまう。
「顔が赤いよ?」
意地悪そうに笑うその顔を直視できないのは別に恥ずかしいからではない。
正直に言えない分顔に出てしまうのを知って、いやでも顔が熱くなるのを感じた。