hot eyes

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7/22/2024, 9:11:42 AM

「おそろいが欲しい?」

お皿を洗いながら、私はお風呂の準備をする彼に聞き返す。
「うん、お揃い良いなーって」
「なんで急に?」
「玲人(れいと)さ、イルカのキーホルダー付けてたんだけどお揃いなんだって。葉瀬(ようせ)と」
ふーん、と軽く聞き流して尋ねる。
「でも私達、もう結構おそろいあるよね?」
ほら、と洗っていたマグカップを見せる。
これは色違いで買ったおそろいのマグカップである。ちなみに私が緑色、彼が赤色。
「うん、そう......そうなんだけどさ...!」
「?」
両手で何か持つようなポーズをとっている。なんのポーズなんだろう?

「なんか身につける物が欲しいの!」
「......見せつけたいの?」
「そう!!」

なんだ、そういうことか、と納得した。
「なら今度の休みに見に行く?」
「見に行く!」

うーん、何が良いかな、ブレスレットとかどうかな、あとで一緒に調べようかな、とぼんやり考える。

おそろいが欲しいと言われた時、私も同じ気持ちになったのは......またあとで言おうかな。

お題 「今一番欲しいもの」
出演 秋 拓也 玲人 葉瀬

7/20/2024, 8:53:46 AM

今日は、葉瀬(ようせ)の要望で水族館に来ている。

普段なら、玲人(れいと)はどこ行きたい?と聞いてくるのだが、珍しく葉瀬が『水族館に行きたい』と言ったのだ。

そんな彼女は今、ジンベイザメをまじまじと見ている。

「...そろそろ次行く?」
「ん?うん、行く」

俺が声をかけると彼女はこちらを向いて歩き出した。


彼女はじっと見るのが好きらしい。前にその事について聞くと、『うーん、だって好きなものはずっと見てたいじゃん?』と言っていた。

次は熱帯魚エリアに来た。葉瀬はエンゼルフィッシュを目で追っている。
「......綺麗?」
俺がそう聞くと、ハッと我に返ったように「うん、綺麗だよ」と答えた。
「...玲人はどれ好きとかある?」
「うーん......あ、あの白っぽい子綺麗だね」
「あれ?...ハタタテハゼだって~、ハゼ科のト......あ、隠れた...」
あれー...?と岩の間を覗き込む。
「おーい...おーい......駄目だ、奥行っちゃった」
「ちょっとビビりなのかもね」
「かもね......あ、そろそろ次行く?」
「うん、次ってクラゲエリア?」
「そうそうクラゲ~」


そうやって俺達は水族館を一周した。
イルカショーも見たし、ペンギンの散歩も見た。エサやり体験だって出来た。

そして最後と言えば。

「あ、おみやげ見ていこうよ」
「いいね~何あるかな?」

俺はおみやげコーナーで見つけたクマノミが描いてある栞を買った。
「葉瀬は何買ったの?」
「え、あー......いや、まだ」
「あれ?そうなんだ。あ、ごめんこれ持っててくれない?お手洗い行ってくる」
「あ、うん」


(葉瀬買ったかな.........ん?)
俺が戻ってくると、何かを持って唸っている。
「.........やっぱ止め」
「葉瀬」
「うわっ!な、何玲人...」
「それ何?」
俺は葉瀬の手に持っているものを指す。
「あ、えっと…」
「...キーホルダー?」
そう聞くと気まずそうに目を逸らした。
よく見るとそれはイルカのペアキーホルダーで。

「えっと............お、揃いでつけたい、なって」

顔を上げると葉瀬が恥ずかしいのか、口元を手で隠している。
「.........嫌なら」
「いいね、つけようよ」
俺は葉瀬が言い切る前に食い込むように返事した。
「え、ちょ、いいの?」
「いいよいいよ」
戸惑う彼女の前に人差し指を立てる。


「お揃いなんて、これからもっと増えてくんだから」



「...玲人、今日は付き合ってくれてありがとう」
「全然いいよ。俺も楽しかった。普段俺ばっかり好きなところ行ってるから、葉瀬の好きなもの知れて嬉しいよ」
「......なら良かった、かな...?」
「また来ようね」
「うん」
そう返事する彼女の瞳には俺が映っていた。


お題 「視線の先には」
出演 玲人 葉瀬

7/16/2024, 9:38:28 AM

「え、雪(ゆき)って『あの』実(みのる)と付き合ってるの...?」

大学の食堂。俺はスパゲティを、葉瀬(ようせ)はカレーを食べていた。
「え?うん。それがどうしたんだよ」
恋愛の話になり俺が実と付き合っていることを話すと、葉瀬は渋そうな顔をした。そして恐る恐る口を開き、

「......悪いことは言わないからさ、別れた方がいいよ。実と」

そう言った。
「...は?え、何急に。脅し?」
「いや本当にアイツは止めた方がいい。冗談とかじゃなくてさ」
葉瀬は運びかけていたスプーンを皿に下ろす。そしてキョロキョロと辺りを確認したのち、少し身を乗り出して小声で話す。

「.........その、実ってさ、女遊び激しいって噂あるんだよ」

...まさか。
「......葉瀬、言っていい冗談と悪い冗談あるから」
「だから冗談じゃなくて」

「っ止めろってば!」

少し声を張ってしまったかもしれない。そんなことは気にせず、葉瀬を睨む。
「...っご、ごめん」
「もう言わないって約束して」
「もう言わない。ごめん」
「......いいよ」
葉瀬はカレーの皿を見つめて動かない。俺は我に返って、冷たい空気を壊した。
「もういいから、カレー冷めるし食べよう。な?」
「...うん」
そう言って俺達は再び食事を始める。
「...雪、最後にこれだけ言わせてくれ」
「ん?」


「雪が......雪が幸せならそれでいいけど、時々でいいから自分の事客観的に見てね」




なんて話してたのが一年くらい前。

あの時、ちゃんと葉瀬の話を聞いておけば良かったのかもしれない。

今日は俺と実の一年記念日。早く帰ってきてって、ちゃんと言ったのに。

実は俺じゃなくて、他の人を選んだ。

ビリ、ビリ

一つ一つ、料理をラップで包んでいく。

「......ぅ...」

ぽた、ぽた、と机に涙が落ちる。


「うぅ......ぅ...っ......ぅう...」

脱力して、床に座り込む。


(...俺、実のどこが好きだっけ)

ぼんやり考えてみた。

俺ばっかりが好きだったみたいだな。そういえば実から名前で呼ばれたのっていつだっけ。

「はは......わかんないや......」

なんて考えていたのが実が帰ってくる四時間前の話。


お題 「終わりにしよう」
出演 雪 葉瀬 実

7/11/2024, 9:59:48 AM

「うっ.........わ」

目が覚めると彼女の顔が目の前にあった。

パッチリと目は閉じられ、ピクリとも動かない。

「............」

昨夜は俺が寝るまで帰ってこなかったが、いつの間に帰ってきたのだろう。

別に浮気じゃないのは知ってる。この時期になるといつも零時を回って帰ってくることが多い。メイクをして隠しているが、目の下に隈が出来てる事も知ってる。

本人はバレてないつもりらしい。

「.........よいしょっ」

俺は起き上がって彼女をベッドの中央に寄せる。

彼女が起き上がる前にでも朝食を作っておいてやろう。

お題 「目が覚めると」
出演 玲人 葉瀬

7/7/2024, 8:28:22 AM

ふわふわの茶髪。

パッチリ二重に長い睫毛。

少し焼けた薄小麦色の肌。

俺を呼ぶあの立つ声。


「真人(まひと)~」


線路の向かい側で、入道雲を背に立っている。

ゆらり、ゆらりと上で振られる右手。

俺はゆったり、ゆったり歩く。


「真人~」


暑い。

ジィィィ、ジィィィと蝉が鳴く。

顔からポタポタと汗が垂れる。

シャツが背中にくっついて気持ち悪い。



「ま ひ と~」



逆光で顔がよく見えない。

でも笑ってる。


「...ひな」


た。

俺がそう言おうとした時、ゴウンッ!と目の前に電車が来る。俺は驚いて思わず後ろによろける。そんな俺を気にもせず、ガダタンッ、ガダタンッ、ガダタンッ、と走り抜けていった。

その勢いに、ぺたん、と思わず尻餅をつく。

.........ンカンカンカンカンカンカン

近くで踏み切りの音がする。電車が走り抜けるとその音は止み、スッと踏み切りは上がる。

その先に、彼の姿は無かった。



(...あぁ、そうだった。彼は、もう居ないんだった)



俺は立ち上がって砂を払い、程なくして帰路へとついたのだった。

お題「友だちの思い出」
出演 真人 陽太

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