ふわふわの茶髪。
パッチリ二重に長い睫毛。
少し焼けた薄小麦色の肌。
俺を呼ぶあの立つ声。
「真人(まひと)~」
線路の向かい側で、入道雲を背に立っている。
ゆらり、ゆらりと上で振られる右手。
俺はゆったり、ゆったり歩く。
「真人~」
暑い。
ジィィィ、ジィィィと蝉が鳴く。
顔からポタポタと汗が垂れる。
シャツが背中にくっついて気持ち悪い。
「ま ひ と~」
逆光で顔がよく見えない。
でも笑ってる。
「...ひな」
た。
俺がそう言おうとした時、ゴウンッ!と目の前に電車が来る。俺は驚いて思わず後ろによろける。そんな俺を気にもせず、ガダタンッ、ガダタンッ、ガダタンッ、と走り抜けていった。
その勢いに、ぺたん、と思わず尻餅をつく。
.........ンカンカンカンカンカンカン
近くで踏み切りの音がする。電車が走り抜けるとその音は止み、スッと踏み切りは上がる。
その先に、彼の姿は無かった。
(...あぁ、そうだった。彼は、もう居ないんだった)
俺は立ち上がって砂を払い、程なくして帰路へとついたのだった。
お題「友だちの思い出」
出演 真人 陽太
7/7/2024, 8:28:22 AM