今日はエイプリルフール、ということで。
「玲人(れいと)実は私、今まで彼氏50人くらいいたことあるんだ~」
玲人に嘘をついてみたのだ。
私に関して、玲人の驚いた顔はあんまり見たことがない。だからちょっとだけ、ちょっとだけ気になったのだ。
「...ふーん」
「学生時代、モテにモテまくってコロコロ彼氏変わってたんだ~凄いでしょ」
こんな分かりやすい嘘はないでしょ?
「......まぁ俺もいたし、お互い様ってとこかな」
「え?」
「ん?俺だって学生時代、彼女の1人や2人いたよ」
「は、え、ちょ、聞いてない」
「だって聞かれなかったし」
私は隣に座っている玲人に問い詰めた。なんでも高校生の時に1人、社会人になってから1人付き合っていたらしい。どちらとも別れたが。
「私...玲人の初彼女じゃないの...!?」
「いや、この年で初彼女とかまずいし」
「わ、私は玲人が初彼氏なのにっ...!」
「............あー...」
「え!?何!?」
玲人は何かを察すると「なんでもないよ」と苦笑いした。
「うぅ......玲人の初彼女になりたかった...」
「なんでだよ...」
「初めてって特別感あるじゃん!!むぅ...!!いいもん!最後の彼女になるんだから!」
そう言うと玲人は「?」を浮かべた。
「玲人の彼女は私で最後。玲人の隣に居るのはずっとこれからも私で、結婚しても、子供が生まれても、ずっと私。死んでも離さないから」
「こっわ......てか重...」
「玲人だって初彼氏ってわかって嬉しかったくせに!顔に出てるぞ!!?あと玲人の方が重いだろ!!」
「重くないよ?...ただ」
「ただ?」
「ただこんなに可愛い葉瀬(ようせ)が、誰にも触れられてなくて良かったなって。触れるのは一生俺だけでいいし」
そう言って玲人は葉瀬の右頬に触れ、左の頬にキスをした。
「なんなら他の人と同じ空間にいて欲しくないよね。空気すら触れられるの嫌だし」
「.........それを世間では重いって言うんだよ」
「そう?俺なりの愛情表現なんだけどなぁ」
「...私には伝わってるからいいよ。でも限度は考えてよ?」
「うん。葉瀬は優しいね」
「玲人だけにだけどね」
玲人は私の頭を優しく撫でる。
なんとなく部屋全体が甘い雰囲気になった気がした。
あれ?私、玲人に嘘ついて驚かせる予定だったんだけど。
お題 「エイプリルフール」
出演 葉瀬 玲人
しばらく電車に揺られていると、黒髪ショートヘアと茶髪セミロングの男性二人組が歩いてきた。
「わぁ...!綺麗~!」
「うわ......」
どちらとも違うタイプのイケメンで少しだけ黒髪の方が背が高い。黒髪はどちらかというと正統派で、茶髪の方はお姉さん系というか、なんというか。
「凄いな......あ、どこに座る?」
「......んー、私ここがいいかな?」
「じゃあそこにしよう」
「えっ。うん......ありがと」
前言撤回。黒髪の方は女性だった。
二人組は俺と通路を挟んで向かいの席に座った。
「見て!ピンクの空だよ!」
「本当だ......あ、青い鳥がいる」
「えっ、どこどこ」
「ほらあそこ」
「え?どこ?」
「あそこ!」
二人は頭を近づけて窓の外を見る。指を差して茶髪の男性は黒髪の女性に教えていた。
なんと微笑ましい光景だろう。まるで小さな子供たちを見ているみたいだ。
「あ、見っけ!青い鳥だ~!」
「凄いよね、俺初めて見たよ」
「私も!......あのさ、隣行っていい?」
おっと?これは黒髪の方攻めたな。
「え、うん。いい、よ...?」
おい茶髪、なんで疑問形なんだ。
「やった。ありがと~」
「...見にくくない?俺屈もうか?」
「んーん、大丈夫!こうするから」
そう言って黒髪は茶髪を抱き締めた、のか?
「ちょ...!いくらなんでも、それは恥ずかしいって...!」
「いーじゃん、誰も居ないんだし」
もしや、これは俺が見えてないということか。
確かに「俺が見えている」と設定してもいいが、このままにしておこう。なんなら薄く空間で仕切っていることにしよう。そっちの方が彼らの為だ。
「駄目?」
「...まぁそれで見えるんだったら、しょうがないよね」
許すんかい茶髪!!!ツンデレかよ!!と俺は心の中でツッコミを入れた。
「やった~」
「...落とさないでね」
「大丈夫、落ちるときは一緒だよ」
「落とすなって言ったよね?」
黒髪は嬉しそうにしている。なんだかんだで茶髪も嫌がってないし、寧ろ楽しんでる。
なんだか見てるこっちも嬉しくなって、心の中で『お幸せに』と呟いた。
四月が始まる。
次は彼らの事を書こうかな。
お題 「幸せに」
昔々の遥か昔、心優しい天使が居ました。
天使は誰にでも優しく、皆から愛され、天使の中の天使の様な方でした。
でもそれを良く思っていない、悪い天使が悪戯を始めたのです。
しかしそれはすぐに気づかれ、皆で悪い天使を迫害し、底へと落としたのでした。
そうして心優しい天使は、いつまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
と彼女はそういかないだろう。
迫害されたその天使は、本当は何もやっていなかったのだ。
わざとそう仕向けられたのだろう。
元々、その『悪い天使』は新しい天使の事など眼中に無かったのだ。彼女はそれが気にくわなかったのだろう。なんとも残酷な話だ。
『悪い天使』は天使の象徴である輪を取られ、羽を切断され、奈落へと落とされた。
よくある転生小説なんかだとこの後『悪い天使』が過去に戻って他の天使に復讐するのだが、生憎現実ではそんな事は起こらない。
これからも彼女は『悪い天使』として地を這って生きていかなければならない。
悪と呼ばれた『悪い天使』にハッピーエンドは一生訪れないのだ。
お題 「ハッピーエンド」
出演 ブロック・アンノウン
「愛してるゲームしよ!」
「阿保?」
「アホじゃない!しかも英語バージョン!」
「常軌を逸した阿保だったか」
「なんでそうなるの!」
寝る少し前にリビングで二人、ドラマを見ていた時に突然始まった。葉瀬(ようせ)は頬を膨らませ、玲人(れいと)に抗議する。相変わらず玲人は冷ややかな目で見ている。
「普通の愛してるゲームじゃ面白くないでしょ?だから英語で伝えるんだよ。ちなみに私は英語が苦手だから調べてから言うね」
「...まぁいいや。なら俺も調べていい?」
「おっ、いいよ~じゃあ五分後にスタートね!」
そう言って二人はスマホとにらめっこを始めた。
「じゃあ始めようか、玲人」
「はいはい」
「まず私からね!」
葉瀬は勝ち誇ったような顔で玲人の顔を見る。頬に触れ、離さぬように目を合わせる。
「I’m mad about you」
「...なんて?」
「I’m mad about you!...その、あなたに首ったけって意味だよ...」
葉瀬は英文を翻訳すると、恥ずかしそうに目を逸らした。
「よ、葉瀬負けてるじゃん」
「玲人だって顔赤いよ~!?」
そうツッコミをすると、ふははっ、と葉瀬は吹き出す。
「意外とヤバイねこれ」
「...じゃあ次俺ね」
耳貸して、と葉瀬を近寄らせる。そして耳元で
「My heart is yours forever」
と囁いた。
「...マイハート......ふぉーえばー?」
「俺の」
「?」
「...俺の心は、永遠に葉瀬のものだよ」
そう伝えると、玲人はそっと葉瀬から離れた。
「......は、葉瀬の負けだね」
「...そう来ると思わなかった」
「予想外って事?珍しいじゃん...」
「うぅ......今日はこの辺にしといてやる...次は覚悟しろよ!!」
そう言って真っ赤な葉瀬は寝室へ逃げていった。
「......逃げるとこ間違えてるでしょ...」
そう呟いて、玲人も寝室へと向かったのであった。
お題 「My Heart」
出演 玲人 葉瀬
「真人(まひと)っていいよな~頭良くて」
「陽太(ひなた)もあんま変わらないだろ」
「でも真人の方が頭良いじゃん」
「それは事実」
「だよね!?...あと真人って目がキリッ!ってしてるじゃん?それもいいな~」
「俺は陽太のパッチリしてる目がいいけど」
「ふふん、俺のパッチリな目は誰にも負けないぜ!!」
「あとそういうポジティブなとこ」
「ん?俺そんなポジティブ?」
「ポジティブ。テストの点が悪くても、アイス食べる元気はある」
「アイスは別でしょ!!」
「あとは元気で明るいとこ。誰でも友達になれるよな」
「俺友達100人作ることが夢だからね!でも真人みたいに、ビシッ!クール!みたいになりた~い」
「その顔でなったら皆びっくりだよ」
「んぇ~俺真人になりたかったな~」
「俺は陽太になりかったよ」
「...なんかの拍子に入れ替わりとかしないかな?」
「それは嫌だ」
「なんで!!」
「陽太のキャラを演じきれる自信がない」
「...俺もかな!!俺らはこのままが一番いいかも!」
「俺もそう思うよ」
お題 「ないものねだり」
出演 陽太 真人