しばらく電車に揺られていると、黒髪ショートヘアと茶髪セミロングの男性二人組が歩いてきた。
「わぁ...!綺麗~!」
「うわ......」
どちらとも違うタイプのイケメンで少しだけ黒髪の方が背が高い。黒髪はどちらかというと正統派で、茶髪の方はお姉さん系というか、なんというか。
「凄いな......あ、どこに座る?」
「......んー、私ここがいいかな?」
「じゃあそこにしよう」
「えっ。うん......ありがと」
前言撤回。黒髪の方は女性だった。
二人組は俺と通路を挟んで向かいの席に座った。
「見て!ピンクの空だよ!」
「本当だ......あ、青い鳥がいる」
「えっ、どこどこ」
「ほらあそこ」
「え?どこ?」
「あそこ!」
二人は頭を近づけて窓の外を見る。指を差して茶髪の男性は黒髪の女性に教えていた。
なんと微笑ましい光景だろう。まるで小さな子供たちを見ているみたいだ。
「あ、見っけ!青い鳥だ~!」
「凄いよね、俺初めて見たよ」
「私も!......あのさ、隣行っていい?」
おっと?これは黒髪の方攻めたな。
「え、うん。いい、よ...?」
おい茶髪、なんで疑問形なんだ。
「やった。ありがと~」
「...見にくくない?俺屈もうか?」
「んーん、大丈夫!こうするから」
そう言って黒髪は茶髪を抱き締めた、のか?
「ちょ...!いくらなんでも、それは恥ずかしいって...!」
「いーじゃん、誰も居ないんだし」
もしや、これは俺が見えてないということか。
確かに「俺が見えている」と設定してもいいが、このままにしておこう。なんなら薄く空間で仕切っていることにしよう。そっちの方が彼らの為だ。
「駄目?」
「...まぁそれで見えるんだったら、しょうがないよね」
許すんかい茶髪!!!ツンデレかよ!!と俺は心の中でツッコミを入れた。
「やった~」
「...落とさないでね」
「大丈夫、落ちるときは一緒だよ」
「落とすなって言ったよね?」
黒髪は嬉しそうにしている。なんだかんだで茶髪も嫌がってないし、寧ろ楽しんでる。
なんだか見てるこっちも嬉しくなって、心の中で『お幸せに』と呟いた。
四月が始まる。
次は彼らの事を書こうかな。
お題 「幸せに」
3/31/2024, 3:31:49 PM