夏、蝉の声とチャペルの音。
大好きな貴女は幸せそうに男性と腕を組んでいる。
白いドレスが良く似合う。
私が6歳の時に産まれた貴女。
母からは「良いお姉ちゃんでいてね」と言われたから私はずっと貴女の良いお姉ちゃんでいたわ。
おもちゃもあげた、相談にも乗った
貴女への恋心も隠し通した。
これからも、ずっと私は貴女の良いお姉ちゃん。
17時、学校の裏山。
沈む夕日を眺めていた。
チセ「手、止まってるよ」
ハル「あっ……ごめんなさい」
チセ「…休憩しよっか」
私たちは近くの岩に座る。
学校指定のジャージが土まみれだ。
手も豆だらけで痛い。
ハル「ごめんなさい……私のせいで」
チセ「いいのよ、ハルに無理やり迫ったコイツの自業自得よ」
チセさんは足元のブルーシートに包まれ横たわる170cmソレを蹴り飛ばした。
ソレは転がって穴に重い音を立てて落ちた。
チセ「さっ埋めちゃお」
ハル「はい…………あの、チセさん」
チセ「なに?」
ハル「どうして……手伝ってくれるんですか?バレたらチセさんまでっ……!?」
唇に柔らかいものが当たる。
チセさんの顔が近い。
顔が熱くなる……。
チセ「そういうこと」
君の目を見つめると私が映る。
でも君は私を見ていない。
だって君が恋しているのは、見つめているのは
私の双子の妹。
君じゃない人と結婚した妹。
同性だからと君をフった妹。
私と瓜二つの顔、両親でも聞き分けられない声。
君は私を見ながら妹を見ている。
それでもいいよ。
私は君が好きだから……。
星空の下、海岸。
少女が2人手を繋いで立っている。
彼女達の黒いセーラー服が夜闇に混ざる。
セイカ「本当に後悔しない?」
キララ「しないよ、ずっーとセイカと居られるんだもん」
どぷんっ……!
星空の下、海岸。
無人の浜辺に波の音が響く。
マユ「聞いて聞いて! 私、プロポーズされちゃった!」
昼下がりのファミレス、私の幼なじみが薬指に輝く指輪を見せてくる
サチ「あらぁ! 良かったわねぇ。
私も恋愛相談に乗った甲斐があったわ」
私は笑顔で、機嫌のいい高い声で、マユを祝福する。
でも私は、マユを心から祝福できない。
マユ「それでね、サチには結婚式でスピーチして欲しいの!」
サチ「あら、私でいいの?」
マユ「もちろん! サチは私の一番の親友だもん」
〈親友〉 その言葉が私に突き刺さる……。
そう、私はまゆの親友。
それでいい、それで充分。
マユ「やってくれる……?」
サチ「もちろん! 私はマユのこと……大好きだもの」